例えば「全国がん登録 罹患数・率 報告」(令和3年/厚労省)によると、全部位の罹患数は98万8900人で人口10万人当たりの罹患率は788.0となっている。これは令和3年1年間の集積データで、日本人人口の約0.8%に相当する数字だ。
一方、令和4年の国民生活基礎調査(厚労省/層化無作為抽出した5530地区のすべての世帯を対象)によると、がん患者の通院者数(15歳以上)だけで105万2000人となり、そのうち「仕事あり」が40万3000人となっている。
そして、この国民生活基礎調査を基に、厚労省が特別集計したデータでは、「仕事を持ちながら通院している者」は男性19.2万人、女性30.7万人で計49.9万人となっている。ベースとしている国民生活基礎調査よりも10万人近く多い。正確な調査は難しいので、どうしても違いが生じるということだろう。
厚労省が特別集計したデータによると、男性の通院就労患者19.2万人のうち60歳以上が14.3万人(74%)、女性は30.7万人のうち60歳以上が10.9万人(35%)だった。
高齢の通院患者が仕事を続けている
男性患者の高齢化率に驚かされる。14.3万人のうち7.3万人はなんと70歳以上である。がん治療で通院している男性患者の4割近くが70歳以上という高齢化社会の過酷な現実が目の前にあるということだ。
この調査では高齢の通院患者が仕事を続けている動機、理由については聞いていないが、65歳の筆者が通院しながら仕事を続けているのは、生きがい、やりがいが動機となっていた。高齢の通院患者にもあてはまるのではないだろうか。
東京都の「がんになった従業員の治療と仕事の両立支援サポートブック」(令和4年)の中に、がん患者の就労意向についての質問があった。831人の回答者のうち「仕事を続けたい」が80.5%と多く、その理由は①家計維持72.5%②自身の生きがい57.4%③がん治療代のため44.5%となっている。経済的理由もあるが、「生きがい」が50%を超えている点に注目したい。

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