朝日新聞トップが語った「反省」と「未来」…“朝日新聞らしさ”をどう再定義するのか 「これまで記者の主張が入り込んで失敗してきた」

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――そうすると、よくも悪くも“朝日新聞らしさ”のようなものは今後変わっていくのでしょうか。

変わるところはあるが、メディアの存在価値は権力監視的な発想などにあって、政府とともに歩むことではない。いろんなものを批判的視点から眺めることは基本でないといけない。

それは朝日新聞がこれまでいちばん強かったと思うし、これからも変わらない。経営が悪くなるとそういったところが段々緩くなるが、朝日新聞こそは断じて譲らないぞ、という思いで大事にしたい。

流れたフェイクを修正するすべは

――一方で今、SNSなどを見ていると、新聞社は「オールドメディア」とラベリングされて、新聞側としては真っ当だと思って情報を発信していたとしても、読み手に届きにくい現状もあるように感じます。SNSが影響力を持つ時代における新聞の役割や可能性をどう考えますか。

1例を挙げると、兵庫県の(内部告発文書の問題をめぐる)取材で、朝日新聞の記者が上から目線の質問でやり取りを潰してとんでもない、というYouTubeが流れて45万回も再生されたが、調べたら(該当する発言をしたのが)別の社の記者だったとわかった。(編集部注・その後、配信者から一部訂正がなされたが、Xでの表示回数は8万件にとどまった)

朝日新聞の記事ができるまでのプロセスなどを紹介したショートドラマ「新しい朝をつくれ。」(画像:朝日新聞社)

フェイクであろうとも、1回流れてしまったものを修正するすべはどのメディアも本質的に持っていない。だけど、ここで「けしからん」「処罰だ」と言うと、私どもがよって立つ言論・表現の自由を自ら壊すことにつながりかねない。

この隔靴掻痒感に、残念ながら朝日新聞として策を持ち合わせていないが、指摘をしていく、あるいは不当な主張に対し、誰が主張したのか、名誉毀損を広めているのは誰か、その開示の仕組みが今の形だけでいいのか、といった部分での対応をしていかないといけない。

“真っ当なニュース”はどうやって記者が取材して作っているか、新聞と縁のない人たちにそのプロセスも知ってほしいので、ムービー(編集部注・朝日新聞記者の仕事を紹介するショートドラマ「新しい朝をつくれ。」)を作った。お金はかかるが、若い人たちに新聞に関心を持ってもらう意味で1つの成果という手応えはある。こういう訴えは業界としてもやるに値するのではないかと思う。

朝日新聞が求める今後のジャーナリスト像や、台頭するAIとの向き合い方について語った本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「「強い主張を繰り返すメディアは親しまれない」「ネット出現時の失敗を繰り返していいのか」…朝日新聞社長が語った“反省”とAI時代の生き残り方 」でご覧いただけます。
茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、通信業界とITベンダー業界を中心に取材。メディア、都市といったテーマにも関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んだ。

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