公約実現への焦りで墓穴。犯罪歴ない移民まで強制送還対象としロス暴動発生、政策大転換のうえ敵に塩を送ることに

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

不法移民は、アメリカ社会にとっても、アメリカ経済にとっても不可欠な存在だ。農業労働者の40%は不法移民だし、彼らがいなければ、レストラン事業やホテル事業は成り立たない。トランプ大統領もホテル経営で多くの不法移民を使っていた。

当初、トランプ政権は犯罪歴のある移民を集中的に逮捕し、強制送還してきた。また、新たにメキシコとの国境を越えてきた不法入国者を対象とした。だが、月々の逮捕・強制送還の件数とホワイトハウスの目標である年100万には大きな差がある。

実績上がらず焦り、強制送還対象者の範囲を拡大

2~4月の強制送還は1万1000人~1万7200人。これに対しバイデン政権は月平均2万3000人だった(過去最高の月3万5000人超はオバマ大統領政権時)。トランプ大統領は、毎日、国境警備の最高責任者トーマス・ホーマン補佐官に電話を掛け、強制送還の数を聞くほど、この問題に対して神経質になっていた。

いら立っていたのは、不法移民政策の責任者でトランプ大統領の側近中の側近であるスティーブン・ミラー次席補佐官も同じだ。5月21日に当初は1800人としていた1日の逮捕者の目標を3000人に引き上げた。だが、犯罪歴のある不法移民はそれほど多くない。また、新規の不法入国者数は第2次トランプ政権誕生以降、月20万人から1万2000人へと急減している。月20万人の不法入国者がいれば、100万人の強制送還は簡単だったが、犯罪歴のある不法移民だけが対象では、目標を達成できない。

目標達成には、犯罪歴などに関係なく不法移民を逮捕するしかない。ミラー次席補佐官は、ICEに捜査令状や逮捕状がなくても逮捕するように求め、「家具の大手小売業者のホーム・デポやコンビニなどで不法移民と疑われる人物を逮捕する」よう尻をたたいた。目標未達によりICEのケネス・ジェナード強制執行担当部長と国土安全保障省のロバート・ハマー調査部長が更迭されていたため、ICEの職員は目標を達成できなかったら職を失うかもしれないと恐怖感に駆られた。バイデン政権のときは自制していた学校や教会、病院での逮捕も続発した。

次ページ民主党地盤の「聖域都市」を狙い撃ち
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事