世界で増える「日本ファン」。日本大好きアメリカ人エコノミストが"アメリカ外し"の無秩序な世界でも日本が"意外に繁栄できる"と考える訳

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ところが今後は、アメリカによるウクライナ情勢関与からもわかるように、何が起こるかわからない。地政学的、経済学的に不安定になるのは避けられない。

「トランプはビジネスマンだから関心があるのは経済成長」と思われがちだが、彼が関心を持っているのは、「金、権力、エゴ、恨み」。根底にあるのは極端なナショナリズム、保護主義、孤立主義だ。

リチャード・カッツ(Richard Katz)/東洋経済 特約記者。 カーネギー国際問題倫理評議会の元シニアフェロー。日本に関する月刊ニューズレター「The Oriental Economist Report」を20年にわたり発行、現在はブログ「Japan Economy Watch」を運営。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『腐りゆく日本というシステム』『不死鳥の日本経済』

トランプは各国経済に甚大な悪影響を及ぼす

トランプはアメリカの貿易赤字ゼロを掲げているが、経済の仕組みとしてアメリカが「生産よりも多く消費する国」で、他国が「生産のほうが多い国」という前提である以上、アメリカの赤字を縮小させるには成長を鈍化させるか、マイナス成長にするしかない。例えばリーマンショックでは、失業率が10%まで上がって、貿易赤字がGDPの2.5%分も縮小した。

トランプはその2倍の削減を目指している。それを実現するには、とてつもなく深刻な景気後退が必要になる。だからこそ、最近多くの経済学者たちが、今後の景気後退を予測するようになっている。

そんな無理な目標がもたらすのは、経済への甚大なダメージだ。しかもそれはアメリカ経済だけじゃない。他国にも影響を及ぼす。日本の場合、大和総研は、もしトランプの関税政策が継続されるとすると、2029年までに日本のGDPは本来の予測より約3%低くなると見ており、それが日本の成長の大部分を打ち消してしまう可能性もある。

トランプが2028年に退任したとしても、元の世界秩序には戻らないだろう。それどころか3期目を狙ってくる可能性もある。私たちはしばらくこの不安定さの中に取り残されることになる。

先日、河野太郎氏の出演する番組を見ていたとき、日本でも「アメリカに依存できない」という現実への失望が、経済面でも安全保障面でも、深刻になってきていると話していた。各国はもう「自分たちでどうにかする」方向に舵を切り始めている。世界は無秩序になってきている。

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