「自分たちの地域に飛び火するのか?」、多くの日本人が知らない《ロス暴動》に全米が恐怖する疑心暗鬼の真実

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郊外にある巨大な日曜大工ホームセンターの駐車場には、不法移民が集まることがある。買い物を済ませた富裕層が、屋根の修理やペンキ塗り、庭の芝刈りを安い賃金で担う不法移民をその場で車にピックアップして自宅に連れていくためだ。大きな屋敷で複数の仕事がある場合、ピックアップトラックで何人かの不法移民を乗せていくことさえある。つまり、不法移民なくしては生活が成り立たないのも事実だ。

前述の「摘発・逮捕された」という噂は、駐車場でICEが不法移民を一網打尽に襲ったイメージを地域の人々に与えた。これをきっかけにデモが広がった。

抗議デモは平和的に始まったという(写真:筆者の友人が撮影)

もともとアメリカは合衆国で、歴史的に州ごとの自治が認められている。ところが、トランプ大統領は、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事やロサンゼルス市長の頭越しに大統領による州兵を派遣した。

民主党のホープで、将来の大統領候補でもあるニューサム知事は、トランプ大統領にとっては目の敵でもある。本来は州知事が発動すべき州兵の派遣だが、トランプ大統領は「ICEの仕事をデモ隊が邪魔している。連邦政府ビルは警護が必要だ」との理由で指示した。

ICEの摘発で渦巻く全米規模の疑心暗鬼

ICEによる不法移民の摘発は、ロサンゼルスだけでなく、全米規模で市民との軋轢を増幅している。

筆者が住むニューヨーク市クイーンズ区リッジウッドにあるグローバー・クリーブランド高校に通っている11年生(日本の高校2年生)が8日までに、ICEに身柄を拘束された。名前は明らかになっていない。

地元選出のマイケル・ジアナリス・ニューヨーク州上院議員によると、生徒は違法滞在の疑いで逮捕された。家族と共に、移民法廷で亡命に関するヒアリングに出席していたところだった。つまり、ヒアリング後に出る裁判所の一時的滞在許可を得る直前の「不法」状態だったところをICEが狙い撃ちした。

ジアナリス議員は「家族とは連絡が取れていない。どこに連行されたかもわからない」とX(旧ツイッター)などで発信。ニューヨーク市も「学校内の逮捕ではない。学校は安全」と発信している。しかし、筆者の近所に住む父母は、学校に子どもを送ることに恐怖感を抱いている。

ニューヨーク市は「(亡命や難民認定など一時的滞在許可を得るための)法廷のヒアリングなどを活用することを恐れ、逃げ隠れするのはかえって危険だ」と移民を説得する状況になっている。ロサンゼルスでの事態がこれ以上悪化せず、他都市にも飛び火しないことを願わずにはいられない。

津山 恵子 ジャーナリスト

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つやま けいこ / Keiko Tsuyma

東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、『AERA』に執筆した。米国の経済、政治について『AERA』ほか、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」「HEAPS」に執筆。著書に『モバイルシフト 「スマホ×ソーシャル」ビジネス新戦略』(アスキーメディアワークス)など。X(旧ツイッター)はこちら

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