舞台公演≪不可解ドタキャン≫頻発の裏事情 ハリー・ポッターから歌舞伎まで、観客への補償はどこまで?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

最近の例では、昨年2月の帝国劇場でのミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」のトラブルだ。2月6日から28日まで全30公演が予定されていたが、初日の2日前の2月4日になって興行主の東宝は急遽、2月6日から8日までの合計4公演を中止すると発表した。その理由を東宝は以下のように説明した。

「弊社製作体制のもと、その複雑な演出プランに対応するための確認作業が想定以上に必要となったことなどから、稽古の進行が予定より遅れておりました。予定通りの初日に向けて一同で力を尽くして参りましたが、さらなる修正・見直し等が発生するなどしたことから、進行の遅れを挽回することができず、スタッフ・キャストの安全確保の観点からも、初日を延期し、4公演を中止せざるを得ないという判断に至りました」(6日の正式発表内容。一部割愛)

つまり不可抗力ともいえる災害や、演者の病気等が理由ではなく、上演準備が間に合わなかったというのだ。演劇界最大手の興行主である東宝とも思えぬ大失態だ。

規約の範囲を超えた異例の対応

しかも、トラブルはそれだけで終わらなかった。もともとの休演日である9日の翌日の10日から開演と宣言したにもかかわらず、再び延期したのだ。結局、開演は6日遅れ、7公演が中止となった。振替公演もなかった。

この場合も規約に従えば、チケット代の返金だけで済ませることは可能だが、東宝の対応は以下のとおり異例だった。

「振替公演につきましては、鋭意調整を試みましたが、この度は残念ながら実施することが難しいとの判断に至りました」とし、「公演中止発表以前にご手配済の交通費および宿泊費のキャンセル料、またはキャンセルが叶わなかったお客様は上記交通費および1公演日につき1泊分の宿泊費を、弊社で負担をさせていただきます。また、上記公演回の入場券をお持ちのお客様につきましては、本公演の配信を無料視聴いただけるよう検討しております」

つまり、チケット代の返金に加えて、交通費、宿泊費(1泊分)を補償し(高額であった場合に全額補償しているかは不明)、かつ無料で公演の配信を提示したこととなる。東宝はそれだけ興行主としての責任を重く受け止めたのであろう。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事