舞台公演≪不可解ドタキャン≫頻発の裏事情 ハリー・ポッターから歌舞伎まで、観客への補償はどこまで?
興行中止の場合を除いて、払い戻し等をしないということは、演者の交代や演出の変更などがあっても興行が行われた場合は対応しないということであり、中止の場合でもチケットの額面以上の補償はしないということである。
一般的に、この約款の内容は有効であるが、記載された契約内容がすべて有効になるかというとそうではない。演劇のチケットの購入の場合は通常、消費者契約とみなされるので、消費者契約法が適用され、同法は不当な契約条項の無効を定めている。
消費者契約法8条1項2号は、事業者側の「故意又は重過失」により消費者に生じた損害について、賠償責任の「一部を免除」する条項を無効としている。多くの場合、中止した際にはチケットの払い戻しには応じるので、交通費などの補償をしないという条項はここでいう「一部免除条項」にあたる。
出演者の遅刻で公演中止の場合は?
したがって、公演中止が主催者側の「故意又は重過失」によるものといえるかどうかが重要となる。もし「故意又は重過失」といえるならば、損害賠償の「一部免除」を定めた規約は効力を持たなくなるから、交通費や、場合によっては宿泊費も法的に補填する義務が生じる可能性がある。
ただし、交渉で主催者側がそれを拒否した場合には、消費者が民事裁判を起こす必要があるが、現実にはそこまでして補償を求めるケースはほとんどないだろう。そうした中で、約款の記載内容を超えて、主催者が自主的に補償を行ったケースもある。
古い例では、2013年の東京・新国立劇場で上演されていた舞台「効率学のススメ」の4月21日の直前の公演中止だ。原因は出演者の遅刻だった。ある俳優が開演時間を誤認し、開演時間になっても劇場に姿を見せず、中止になった。新国立劇場は「チケット代金の払い戻し」か「他公演日への振替」を行うこととし、あわせて当日の交通費を負担することを発表した。
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