「高所得者は負担増!」厚生年金《上限引き上げ》で老後設計の常識はどう変わる?
老後のお金について考える際には、公的年金だけでなく働き方の見通しや勤務先の退職金なども踏まえておくことが重要です。折しも今回の改正案では、在職老齢年金とiDeCo(個人型確定拠出年金)の見直しも予定されています。
60歳以降に年金を受け取るか、働いて収入を得るかを左右するのが在職老齢年金というしくみです。現行では老齢厚生年金の月額と、給与やボーナスを月割りした合計額が51万円を超えると、年金が減額または全額支給停止されてしまいます。
すなわち年金を受給しながら働くと年金額が減ってしまう制度なのですが、この基準が2026年4月から引き上げられます。年金が減額・支給停止される水準が62万円(2024年度価格)となり、この範囲内までは働いても年金額が減らないようになります。
現役時代にお金を積み立てて運用し、年金に上乗せする制度のひとつであるiDeCoでは、積み立てられる期間が延長されました。会社員などの場合、現行では最長65歳までですが、70歳まで引き上げられます。
これまでは65歳になると希望しても積立を停止しなければなりませんでしたが、見直しにより5年間長く積み立てられるようになります。積み立てて運用したお金は、75歳までの間に受け取りを開始します。また、iDeCoで積み立てられる金額には上限(拠出限度額)がありますが、これも現行の月2.3万円から月6.2万円まで引き上げられる予定です。
加えて、老齢基礎年金などを受給していなければ働き方にかかわらず70歳まで積み立てられるようにもなるので、65歳以降に働いて収入がある人に限らず、資金にゆとりがある場合に幅広く活用できそうです。
資産形成は個人で担う時代に
こうした見直しにより、今後、老後の年金額を増やす方法は拡充していきそうです。一方で、賃上げや保険料の上限引き上げには、働く個人だけでなく企業の社会保険料負担の増加にもつながります。その結果、企業の退職金や企業年金制度に影響が出ることも懸念されています。
一般的に退職金や企業年金は公的年金の上乗せとして設計されており、高所得層においては上限を超える報酬部分に対する公的年金がないことへの手当の意味合いもありました。
今回の見直しで標準報酬月額の上限が引き上げられれば、企業側が制度設計を見直しに迫られる可能性が考えられます。退職金や企業年金は近年、企業型確定拠出年金への移行も進んでおり、iDeCoと合わせて定年退職後に備える資産形成の主体が、企業から個人へとシフトしている動きもあります。
今後、老後の計画においては、国や企業の制度に依存するだけでなく、自らの働き方や資産形成方法を見直し、積極的に準備していくことがますます重要となるでしょう。
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