「内乱」という呪文に支配される韓国大統領選挙、李在明氏の余裕、盛り上がらない政策論争、台湾有事はスルー?

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もっとも、李在明の側近には北朝鮮への忠誠心を持っている「主思派(チュサパ)」と目される人士たちがいる。何かのきっかけで、李在明がそうした側近たちの意見にも乗って本来の共に民主党的な「親北」路線に舵を切るとも限らない。

外交に関してこの日の李在明演説で最も印象に残ったのは、次の一節であった。

「どこか他国同士が戦争になったとして、韓国としてすぐ片方に見方をするのは賢明でない。国益を最優先して、国民の声を聞いて考えなければならない」

台湾有事は「宇宙人の来襲」?

これには、伏線がある。数日前、アメリカ誌『タイム』とのインタビューで、記者から「台湾有事が起きたら韓国としてどう行動するのか」と問われた李在明は、「宇宙人が地球を侵略してきたときに答えを考える」と奇矯な回答をしたのだ。

冗談めかした言いぶりだったそうなので、おそらく台湾有事が起きる可能性は宇宙人が攻め込んでくるのと同じくらい低いからアレコレと考える価値もない、と言いたかったのであろう。

平沢での演説は、中国・台湾という具体名や「宇宙人」を除いた、穏当な言い回しといえるが、メッセージとしては同じだ。「自分が大統領になれば台湾有事は無視する」である。

これは尹錫悦政権からの大きな路線転換だ。尹は韓国が台湾有事と無縁ではいられないと判断し、いざというときの在韓米軍の運用などについて米国(バイデン政権)と頭の体操に乗り出していた。

平沢は、アメリカ軍が国外に置く基地としては世界最大の「キャンプ・ハンフリーズ」を抱える。私も基地の周囲を取材したことがある。街中の看板は英語だらけで、ハンバーガー店やタコス店があちこちに。韓国の街とは思えないほどアメリカ流であった。

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