「内乱」という呪文に支配される韓国大統領選挙、李在明氏の余裕、盛り上がらない政策論争、台湾有事はスルー?

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実際に選挙戦に入ると、李在明の支持率は伸び悩み、国民の力の予備選挙を勝ち抜いた金文洙(キム・ムンス)候補との差は日を追うごとに縮まってはきたが、それでも逃げ切る公算が高まっている。公職選挙法違反事件で大法院(最高裁)から「逆転有罪」を言い渡されたことも深い痛手となっていない。

陣営にとって心配事であったのは、中道色も持ち合わせている韓悳洙(ハン・ドクス)首相が対戦相手となること、そして保守派野党・改革新党の李俊錫(イ・ジュンソク)候補が土壇場で金文洙の支援に回る形での候補一本化であった。

しかし、そのいずれも現実とはならなかったことで、もはやハードルは消えたと映ったことであろう。

「内乱を終わらせる」

さて、この日の演説。まず、李在明は「韓国の舵取りを任される」という意味合いが込められた船の舵を受け取り、満面の笑みを浮かべて写真撮影のポーズをとる。それから話を始めたのだが、内容に先立って否が応でも気になるのは、演台を囲むようにして設置された防弾ガラスと、サングラスをかけた屈強なSPたち。

李在明候補とともに、屈強なSPが横に並ぶ(写真・池畑修平)

「李在明の暗殺を狙う者がいるかもしれない」と共に民主党が主張して、物々しいセキュリティとなった。司会者も「李在明候補の安全が第一ですので、皆さま、何卒ご了承を」と呼びかける。こうして緊迫感が醸し出された舞台から、李在明は繰り返し訴える。

「内乱を終わらせなければならない。内乱勢力を最後まで摘発して、処罰する」

2024年の戒厳令騒動は内乱であったと断じ、その内乱を引き起こした一味との闘いを完結させるため自分に一票を、という。あるいは、もし金文洙が勝つようなことがあれば内乱は継続することとなり、韓国の民主主義は崩壊する、と。

これほどインパクトが強く、かつイージーな選挙戦略も珍しいであろう。保守派=内乱画策者たちを駆逐しよう。この勧善懲悪の構図が、李在明にとっては余裕に、金文洙にとっては追い上げの限界につながっている。

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