窪田:よくお子さんの不同視、いわゆる「ガチャ目」の相談をされることがあるのですが、実は皆さん、もともとある程度は不同視があるんです。
ただ、小さい頃に視力のずれがあっても、脳の適応力があるので、その状態に慣れていく。でも、大人になってからはその適応がなかなかできないので、後から不同視になるほうがはるかにつらいんです。
柿島:そうなんですね。一度試しに、左右の視力それぞれに合わせてメガネを作ったのですが、かけた瞬間に頭痛がして、とてもじゃないですが、かけていられませんでした。メガネは諦めて、コンタクトも入れてみたのですが、それでも不同視は解消されず。
というのも、左目に強い乱視と白内障があったので、コンタクトでは矯正できなかったんです。結局、1年後に白内障の手術をして、左目に眼内レンズを入れ、ようやく不同視は解消しました。
白内障の手術は「早ければ早いほどよい」わけではない
柿島:実は左目の白内障の手術をする前、担当の先生からは「まだ手術が必要な段階ではないので、もう少し待ったほうがよい」と言われていました。私はどうしても不同視がつらかったので、先生にお願いして早く手術をしてもらったのですが、白内障の手術は早ければ早いほどよいわけではないのでしょうか?
窪田:白内障は緑内障と違い、症状が進行してからでも手術で視力を回復できるので、本当に必要になるまではやらないほうがいいというのが、医師の中での常識ですね。
よく白内障の手術は10分ほどで終わるので、「簡単な手術だ」と思われてしまうのですが、それは大きな誤解です。短時間で手術をするのは高い技術力があるからできることであって、決して簡単だから早くできるわけではないんです。
柿島:手術にはリスクが伴うということですね。
窪田:おっしゃる通りです。「どうせいつかやるなら、早めにやってしまいたい」とおっしゃる患者さんもいますが、やはり手術にはリスクがありますので、本当に必要になるまではやらないほうがいい。もちろん必要があればすぐに手術を行いますが、白内障の手術に限って言えば、なるべく遅らせるに越したことはないんです。