"令和の米騒動"の裏で真相究明は長期化、自民党の「裏金」問題が一向に解明されない《国民不在の情けない事情》
こうした経緯について下村氏は、件の幹部会合に先立つ2022年5月の旧安倍派のパーティー後に「派内の議員から還流再開を求める声があることを、松本氏に事務的に伝えた」と説明。一方で、その際に還流再開に関しては「指示していない」と強調した。
そのうえで下村氏は「幹部会合では還流再開についての結論が出なかった。結論が決まらなかったということは、結果的に『今までどおりでいい』と松本氏が判断したのではないか」と指摘した。
この「ノルマ超過分の還流」は、2022年4月に会長だった安倍晋三元首相の指示でいったんは中止されたとされる。下村氏は予算委での質疑の中で、当時の旧安倍派内に還流再開を求める声があることを安倍氏にも報告したと初めて明かしたが、その際の安倍氏の反応について「『そうですか』という答えで、それ以上のコメントはなかった」と説明した。
これについて野党委員が「還流はやめるべきだ、という安倍会長とは真逆の声だから、(それなりの)発言があってしかるべきではないか」と質した。だが、下村氏は「指示を引っ繰り返すような話はなく、1人から声があるということは情報として伝えた。変えるべきだとかいう話はしていないし、安倍会長からもそういう話はまったく出ていない」と交わした。
さらに下村氏は、松本氏が「旧安倍派幹部から(還流の)再開を持ちかけられた」などと証言したことについて、「会長代理という立場もあり、私自身の話し方で、もしそう思われたとしたら私自身の不徳の致すところだ。それは謙虚に私自身が気をつけなければならないことだと思う。ただ、事実として、そのことによって再開が決まったということはないというのは明らかだ」と、自らが還流再開を主導したことはないと強調した。
「与野党駆け引き」の複雑怪奇ぶりが浮き彫りに
今回の参考人招致でのやり取りも踏まえ、自民党は夏の参院選を見据えて幕引きを急ぐ構えだ。これに対して野党側は「改めて関係者の証言の食い違いが明らかになった」として、旧安倍派幹部だった塩谷氏の参考人招致と、すべての経緯を知る立場にあった森氏の証人喚問を要求する方針だ。
ただ、今のところ塩谷氏は「下村氏のように自ら招致に応じる考えはない」(自民党国対担当者)とされる。さらに、森氏については「ここにきて関係者の間で何回も危篤説が取りざたされるなど、とても国会に出られるような状態ではない」(旧安倍派関係者)とされており、「今国会中の招致実現はほとんど可能性がない」(同)。
こうした状況については、野党側から「参院選まで裏金問題を引きずれるから、かえって都合がいい」(閣僚経験者)との声が聞こえてくる。この辺りに、与野党の駆け引きの複雑さが浮き彫りとなる。
今回の参考人招致について、下村氏の周辺からは「これで次期衆院選に向けての禊(みそぎ)が済んだ。あとは再起に向けて地元を回るだけだ」と、安堵の声すら漏れる。永田町関係者の間では「まさに国民不在の身勝手な発想で、政治不信のさらなる拡大につながる」との嘆きが広がっている。
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