デビュー15周年の松坂桃李「家庭を持ってから考えるようになったこと」。最新作で共演の”大御所俳優”との思い出も聞いた《独自インタビュー》

「一番高揚する瞬間? それは、やっぱりクランクアップですね」
現場には、俳優だけでなく、照明、音声、美術……あらゆるプロフェッショナルがいる。異なる立場の人たちが一つの目的に向かって積み重ねてきた時間。その結晶が「作品」になる瞬間は、何度経験しても特別だという。
だが、作品への評価は思うように届くとは限らない。それについて、松坂は静かに首を振った。
「僕は“これだけ頑張ったんだから評価されたい”とは思っていません。作品は、あくまで“きっかけ”でいいと思ってるんです。誰かがその映画を観て、次の日、ちょっとだけ前向きになれる。誰かと話すきっかけになる――」
ほんの少しでも、日常に寄り添えるなら、それでいい。その“ささやかな力”こそが、松坂が信じるエンターテインメントの本質なのだ。
「夢よりも、今を丁寧に」

デビューから15年、数えきれないほどの役と出会い、別れ、揺れ動きながら、松坂桃李は今も“表現”という道の途中にいる。
「これから20年、30年と続いていく中での理想像は……うーん、そうですね。僕はあまり“大きな目標”を掲げるタイプではないんです」
少し照れたように笑ってから、彼はゆっくりと言葉を選ぶ。
「ただ、自分が携わった作品が、誰かの心に残ってくれること。それがすごく大切だと思っています。見た人が、何かを受け取ってくれるような――そんな“プレゼント”みたいな作品を、これからも届けていきたい」
だからこそ、一つひとつの現場にまっすぐ向き合い、その瞬間の誠実さを重ねていく。
未来を描くのではなく、今という時間に点を打つように――。
「目の前にある作品を大切にしながら、気づけば、その点が線になっていく。そんなふうに生きていけたらと思っています」
大きな夢を語ることよりも、確かな一歩を選び続ける姿。
それが、松坂桃李という俳優の、何よりの“らしさ”なのかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら