職場に潜む「過去の栄光マウント」聞き流すための大人の対処法とは?
もっとも、心にもないほめ言葉を口にすると、私に相談した30代の女性のように嫌気が差すのはよくあることだ。自分に正直で、嘘をつくのが苦手な人ほど、葛藤が生じ、耐えられないと感じるに違いない。
そこで、ほめ方を工夫することが必要になる。「きれいですね」「すごいですね」などと現在形でほめてはいけない。「きれいだったんですね」「すごかったんですね」などと必ず過去形でほめるべきだ。「現在はきれいとはいえない」「現在はすごいとはいえない」という皮肉を込めて。
こうした含意を向こうが読み取ってくれるかどうか疑問だが、私の個人的経験から申し上げれば、読み取ってくれない場合のほうが圧倒的に多い。むしろ、そのほうが好都合だ。相手を怒らせずにすむし、こちらはひそかに「豚もおだてりゃ木に登る」とつぶやいていればいいのだから。
過去の栄光話は眉唾物
なお、忘れてはならないのは、老先生にせよ女性上司にせよ、その口から語られる過去の栄光が必ずしも事実にもとづいているとは限らないことだ。
たとえば、広告会社の営業部に勤務する30代の男性は、40代の先輩の男性から気合と根性の必要性を日々力説され、閉口していた。この先輩は、自分が若い頃どれほど多くの契約を取ってきたかを自慢し、すべて気合と根性のたまものだったと主張して、発破をかけるのだった。ときには、「気合も根性も足りんから、契約が取れないんだ」と言うこともあり、そう言われるたびに30代の男性は恐縮していた。
しかし、あるとき、この先輩と同期だった男性と得意先で一緒になる機会があり、「(先輩が)どうしているか」と尋ねられた。そこで、30代の男性が「気合と根性の大切さを教えていただいています。若い頃はたくさん契約を取ってすごかったらしいですね」と答えたところ、同期の男性は「いまだにそんなことを言っているのか。あいつは体育会系の出身で、若い頃から気合と根性とばかり言っていたけど、その割には契約が取れなかった。“熱さ”が空回りしていた印象がある。だから、いまだに課長にもなれてないだろ」と鼻で笑った。
さらに、「気合と根性で誰だって契約が取れるのなら苦労はない」とつけ加えた。ちなみに、この同期は当時課長になっていて、その後部長にまで昇進した。
先輩が、若い頃多くの契約を取ってきたと称する過去の栄光をひけらかした根底には、あまりパッとしない自分自身に対する欲求不満が潜んでいたのではないか。このように過去の栄光を持ち出してマウントを取る人の話は眉唾物であることが多いので、話半分で聞いておくべきだろう。
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