セミナーレポート

オムニチャネル、RFID、デジタルプラットフォームの最新事例 ─ファッション産業(アパレル・靴・鞄他)業界編─

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【特別講演】
リテールロジスティクスの革新と、
全体最適を実現するトータル支援サービス

若島 隆
丸井グループ 常務執行役員 ムービング代表取締役社長

丸井グループの物流会社ムービング社長を兼務する若島隆氏は「販売チャネルの多様化・複雑化など環境変化が急速に進むなか、従来型の物流スキームでは全体最適の実現が難しくなってきています。3PL・物流アウトソーシングにおいても、最終顧客接点での収益最大化をゴールに置いた一連スキームの革新が不可欠になっています」と述べた。

丸井グループは、店舗・WEB・カードを一体でつなぎ、顧客に高い利便性を提供する「三位一体」のビジネスモデルを掲げ、オムニチャネルも含めた独自の取組みを業界に先駆けて展開してきた。具体的施策として「在庫のリアルタイム更新」「店舗とECの在庫同期化」「EC欠品時の店舗在庫の自動引き当て」「店舗での試着・受け取り」「EC画面でのリアルタイムの店別在庫表示」「メーカー倉庫との在庫同期化」等々、図解を交えながら取り組みと効果を解説した。

また現在、多くの企業で「店舗用在庫」と「EC用在庫」の個別管理が行われているが、これから生じる在庫効率の低下・オペレーションの煩雑化・収益機会のロスなど、実例を挙げて説明した。また、これらの問題を解決し在庫一元管理を実現するための具体的スキームと重要な配慮事項についての解説を行った。

一方、リアル店舗における売場の生産性向上と収益最大化に向けた、ムービング独自の受託事業についても説明した。また同社のWEB通販総合物流センターでは、EC物流に加え、商品撮影・ECサイト制作・コールセンターなど企業から一括で受託をしているが、若島氏は「ECでは物流スキルが売上・利益を左右する重要なファクターになります。特にそれぞれの作業が複雑に絡むEC一括受託は難易度も高いのですが、生産工学的な手法も駆使し高度化に取り組んでいます」と自信を示した。

【テーマ講演】
オム二チャネル戦略に対応した先進的物流施設「Landport」の機能紹介

山田譲二
野村不動産 物流施設事業部長

複数チャネルの在庫集約、散在した在庫の最適化、そして店舗のバックヤードの作業圧縮・スタッフ削減を狙った、大型物流センターが急速に増えている。全国に22物件(計23万坪)を保有する野村不動産も現在、6物件(8万坪)を開発中だ。同社の山田譲二氏は「単なる倉庫スペースではなく、プラスαの効果を発揮できる物流センターを提案したい」と話す。物流センターは、天井高5.5メートルなどの標準はあるものの、立地、入居テナントによって、求められるスペックは変わってくる。山田氏は「立地に適した利用企業を想定し、施設の企画設計を考えています」と述べた。

例に挙げた、千葉県柏市に同社が建設中の物流センター「Landport柏沼南Ⅰ」は、ワンフロア5000坪、3階建ての延べ1万5000坪。特にアパレル企業が、空間を効率的に利用できるさまざまな工夫がこらされている。

ハード面においては、天井高を通常より高めの6.5メートル、容積率は限度いっぱいの200%より少ない174%に抑えることで、中二階のスペースを作るメザニン(積層棚)設置を可能にし、高さを有効活用できるようにした。また、柱間隔も通常より1メートル広い11メートルスパンを採用。棚を多く置けるようにして、1平方メートルあたりの荷物収容量を2割強アップし、季節波動に対応できる仕様となっている。

ソフト面においては、最寄り駅へのシャトルバス、カフェテリアも整備して、人材を確保しやすい環境を整えている。

山田氏は同施設を検品エリアや撮影スタジオを備えたアパレル専業センターとしてご利用いただくことができればと訴えた。

賃貸スキームは、企業から受託された物流事業者が建物を借りるのが一般的だが、その場合、企業が物流事業者を変えようとすると、センターまで移転しなければならなくなるという問題があった。そこで、最近は、企業が直接、センターの賃貸契約を結んだうえで、物流業者にオペレーションだけを委託するケースも増えている。山田氏は「一定量以上の規模の荷主なら、直接契約も考えられます。全国各地に、さまざまなタイプの物流センターを展開している当社にご相談ください」と呼びかけた。

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株式会社野村総合研究所
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