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象徴天皇制めぐる昭和天皇の不満と敗北を描く 『昭和天皇の敗北』など書評3点

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『昭和天皇の敗北 日本国憲法第一条をめぐる闘い』

・『現代経済解説シリーズ 教育の財政構造 経済学からみた費用と財源』

・『今 地球は?人類は?科学は? 生命誌研究者、半世紀の本の旅』

『昭和天皇の敗北 日本国憲法第一条をめぐる闘い』小宮 京 著
『昭和天皇の敗北 日本国憲法第一条をめぐる闘い』小宮 京 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・東京女子大学教授 酒井一臣

「日本国及び日本国民統合の象徴」。民主主義が定着した現在の日本で今さら天皇の権力復活もあるまいということなのか、象徴の意味はあまり話題にならない。

一般に、日本国憲法における天皇は英国王のように「君臨すれども統治せず」といった役割と理解されている。しかし、象徴天皇制は英国の王制とはまったく異なる。

象徴天皇制への不満と敗北 憲法論議、皇位継承問題の原点

本書では、憲法制定過程で昭和天皇が象徴天皇制に納得していなかった点が強調される。憲法改正に消極的だった当時の幣原(しではら)喜重郎首相は、象徴天皇制と戦争放棄を主眼とするGHQの憲法案に驚き、対応が遅れた。その失態を糊塗するため、象徴天皇制を受容する聖断が下ったとの「神話」が流布され定説となった。

では、昭和天皇はいかなる天皇制を希望していたのか。天皇は、敗戦・占領という厳しい情勢下で、せめて英国王のように「国家元首として君臨する天皇」と規定されることを望んだ。それが叶(かな)わなかったから「敗北」なのである。

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