会員限定

自由求め中国脱出、日本に「自足的社会」作る人々 『潤日』など書評3点

✎ 1〜 ✎ 479 ✎ 480 ✎ 481 ✎ 482
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『潤日(ルンリィー) 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』

・『痛み、人間のすべてにつながる 新しい疼痛の科学を知る12章』

・『私とスパイの物語』

『潤日(ルンリィー) 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』舛友雄大 著
『潤日(ルンリィー) 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』舛友雄大 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・神戸大学教授 砂原庸介

水が高いところから低いところに流れるように、人もより豊かで自由を謳歌できる可能性がある地域へと移動しようとする。以前の常識が将来は通用しない、という不安を覚えさせられる中で、どこで生きるのが自分や成長していく子どもにとって望ましいのかは悩ましい問題だ。

自由への旅路は続く 日本に自足的「社会」を移植

自由と安全が広く確保され、以前ほどではないが豊かにもなれそうな日本は、国境を越えて住む場所を求める人々のゴールとなりうる地域だ。しかし移動には高い言語的・文化的障壁があり、移動を希望する人たちは個々にその障壁を乗り越えることを求められる。結果、日本社会で移民はバラバラと独立した存在で、不可視化されやすかった。

これまでの移民と、本書が扱う、本国での自由への制約を懸念して中国からの移動を試みる人々は、性格が異なるように見える。彼らはいわば自分たちの「社会」を日本に移植する形で、言語的・文化的障壁を乗り越えようとしているのではないか。偶然同じ地域に住んだ同郷の人との助け合いを超えて、日本社会の中に自足的な異なる「社会」を作り出す動きである。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD