「就職氷河期世代」を貧困から救えるか…日本人の生活を左右する年金制度改正案の中身

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株式の比率を引き上げるのではないかと予想されていたのだが、トランプリスクや世界経済の不透明感などを考慮に、株の比率引き上げを見送ったと言われている。そのGPIFの運用状況は、下記のようになっている(2001年度から2024年第3四半期までの運用成績)。

●市場運用開始以降の累積収益額…… 164兆3463億円(累積収益額)
●市場運用開始以降の収益率…… 4.40%(年率)
●運用資産額…… 258兆6936億円

この数字を見ると、日本の年金制度は盤石の印象だが、国内外の株式を50%保有していることを考えると不安は募る。最近はインフレ傾向が顕著になってきたため、インフレに負けない高いリターンを目指す必要に迫られているからだ。

GPIFは、数多くの日本企業の大株主になっており、保有する株式を安易に増やしたり、減らしたりできない状況と言っていい。年金資源が減少し、保有する株式からその財源を調達しようと思えば、株式市場は大きく下落することになり、逆に株式の比率を高めてハイリターンを狙えば、それだけマーケットはハイリスクハイリターンになる。年金資産が金融マーケットによって大きく左右される状況に陥っていると言っていいだろう。

また、日本の金利の上昇によって、日本国債の価格にも不透明感が出ている。金利の上昇は国債価格を引き下げるため、日本政府が債務超過に陥るようなことになれば、年金運用の積立金も不安定になってくる。今回のGPIFの運用見直しでは、最終的に現在1.7%の運用利回りを1.9%に引き上げることになっている。わずか0.2%だが、金融マーケットに少なからぬ影響を与える可能性がある。「クジラ」の代表格と言われるGPIFの運用成績には、今後も注意深く見守る必要がありそうだ。

20年後、我々は老齢年金で食べていけるのか?

平均寿命の伸びや、人口減少のスピード、そして日本経済の成長率がどの程度なのか。あるいはインフレが止まらずに、年金だけでは暮らしていけない未来が待っているのか……。結局のところ、我々は自分で自分の老後を管理していく以外に方法はなさそうだ。

現在、比較的豊かな親が多い時代だが、財産を残してくれるのを待つのではなく、親が残してくれそうな遺産を生前に相続してしまうなど、国に税金として取られない方法で、老後資金を確保していく方法もある。年金はインフレとの戦いだが、その戦いは始まったばかりだ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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