森のリゾート「東急リゾートタウン蓼科」を散策 自然が生きる「環境経営」に本気で挑む理由

豊かな自然と共生する「東急リゾートタウン蓼科」
東急リゾートタウン蓼科は別荘の分譲から始まり、現在はゴルフやスキーといったアクティビティを楽しめる複合型リゾートとなっている。会員制リゾートホテルである東急ハーヴェストクラブの第1号施設を開業した地でもある。1965年から開発に取り組んできた歴史あるリゾートライフスタイルの発信地だ。

東急ハーヴェストクラブ本館からは八ヶ岳の眺望が美しく広がる。青々とした緑を感じられる夏がとくに人気だが、今回取材した冬期に見せる雪景色も見逃せない。広大なリゾートではトレッキングコースやアスレチック、バーベキューサイト、渓流釣りなど豊かな自然を体験できる。

ウェルネス事業ユニットホテル・リゾート
開発企画本部
石原 宏基主任
認定を受けた、自然共生サイトとしての最大のポイントは「この地域の特徴でもある標高差です。高山でしか育たない植生や森、水辺の植生といったさまざまな自然環境が保全されています。希少種を含む1699種もの豊富な動植物が確認されている点です」と東急不動産ホールディングスの事業会社である東急不動産の石原宏基氏は説明する。同リゾートは蓼科の特徴的な自然を感じられるユニークなリゾートだ。

カラマツの間伐で自然もリゾートも充実
このエリアで森林や生物多様性の保全に注力し始めたきっかけは2012年、集中豪雨で土砂崩れが発生したことだった。蓼科は戦後、電柱に使用するために植林されたカラマツの人工林が広がっていた。しかし、電柱に木が使われなくなり、山林には根を張る力の弱い木々が残されてしまったことも1つの原因と考えられている。
そこで、リゾート地としても美しい景観を守るため、地元の森林組合と森林経営計画を策定し、計画的に間伐などの手入れをしている。

また、17年からは「もりぐらし」プロジェクトを開始。森林を保全する過程で生じた間伐材から、お香やアロマキャンドルといった地域の自然を活用したプロダクトを製作している。

「森を守り、使い、未来につなぐ循環を生み出し、持続可能な環境をつくるというコンセプトで活動しています。間伐したカラマツを家具や什器、プロダクト製作に使用しています。それ以外にも、ゴルフ場の大浴場に使う燃料を化石燃料から100%バイオマスに代替して給湯できるようになりました」

「TENOHA蓼科」は地域とのつながりも強固に
2024年7月に地域連携と環境への取り組みの発信拠点として「TENOHA蓼科」をオープン。「TENOHA蓼科は自然環境と地域環境という2つの環境と共生することを目的とした施設です。例えば、リゾート内のレストランで地域のブルワリーと一緒に造ったオリジナルビールを提供しています。地域に密着した活動を重視しています」(石原氏)

環境に関する取り組みは社会的意義があっても経済性の問題でなかなか続かないケースが見られる。
「私たちが掲げる環境経営では『脱炭素社会』『循環型社会』『生物多様性』の観点から持続性のある事業機会の拡大を目指して取り組んでいます。発信力の高い地域『広域渋谷圏』※3とここ蓼科はその重点区域です。環境に関心があるならまず蓼科へ行くべき、といわれるリゾートとしての新しいスタイルを提案していきたいです」(石原氏)
地域経済に貢献して地元が盛り上がることで協力事業者も増え、その事業も継続性を高める。社会性と経済性の両輪を回し続けるという本質的な環境共生につながるか注目だ。
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渋谷でも進む、ネイチャーポジティブ
渋谷駅から半径約2.5kmの広域渋谷圏では、明治神宮や代々木公園などの豊富な緑を施設の緑化でつなぐ「エコロジカルネットワーク」形成を目指し、各物件における緑地面積の確保や植栽樹種での在来種選定など、生物多様性に配慮した街づくりを行っている。その結果、東急不動産の2012年以降広域渋谷圏の物件開発では開発以前より生物の種類・数ともに増え(同社調べ)、地域のネイチャーポジティブに貢献している

※2 自然共生サイト:民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を環境省が認定した場所
※3 広域渋谷圏:東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅半径約2.5kmのエリアのこと