「職場結婚やサークルでの恋愛を、絶対にしたくない。別れたら気まずくなるし、コミュニティを壊すかもしれない。和を乱す人間になりたくない、と言うんです。だからコミュニティ外で出会いたい。マッチングアプリで相手を探すといった、ハードルが高いことを求めているなと感じました」(阪井准教授)。
「編集した自分」しか見せられなくなっている
阪井准教授の解説を聞くと、結婚に消極的になる背景には3つの要因があるようだ。
1つ目は、人間関係を深めにくい時代になったこと。例えば、阪井准教授によると、「最近、大学が静かなんですよ。以前なら、200人の教室に行くとザワザワ騒がしく、『授業を始めるから静かにしましょう』と言っていたけれど、そんなことをする必要がない」。2023年まで大妻女子大学で教えていたが、状況は同じだったと話す。

授業前に学生がおしゃべりしていないのは、スマホをいじっているからだ。スマホを持っていれば間が持つし、周りから話しかけられないで済むからというのが理由のようだ。
「去年、大妻女子大学で担当し最優秀論文賞を取ったゼミ生の卒論では、『編集する自己』という言葉を使っていました。SNSでは、相手にどんなイメージを持たれるか考えたうえで自己を編集し発信する。でも、対面や電話などの不意打ちのコミュニケーションでは、編集する余裕がない」。対面のコミュニケーションが苦手になっている可能性を指摘する。
演出された自己しか他人に見せられないのであれば、恋愛や結婚は成立しづらくなる。まして、予想外の行動ばかり取り、瞬発的な対応が求められる子育ては、とてもハードルが高い営みになってしまう。

2つ目の要因は、「出会い認定」が難しいことと結びつく。阪井准教授は「恋愛で和を乱すと、自分がやっと手に入れた居場所が崩れてしまう。この変化が激しい時代に、数少ない安定したものを失う恐怖を感じているのではないでしょうか」と分析する。
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