世界一幸福な社会は「お金で買える親密性」の賜物 『希望格差社会、それから』が描く日本のリアル

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ペットを家族とみなす人々が増えていることは、著者が以前から指摘してきたことだという。独身者、あるいは家族がいても仲があまりよくない人の“ペットへの入れ込み方は違う”のだそうだ。

もちろん、夫婦仲がよく、家族と同じようにペットをかわいがる人も多いだろう。しかし、家族形成をしていない人、家族とよい関係を築いていない人の親密性の受け皿としてペットが機能しているのも事実だということだ。

「推し」の広がり

近年は「推し」ということばが浸透し、さまざまな「好き」という形がこの単語によって包摂されるようになった。具体的には、アイドル、スターやアスリートなど特定の人物、アニメのキャラクターを好きになることなどを指す。

その「好き」をいろいろな形で表現する活動は、「推し活」とも表現される。余談ながら、それは数十年前のオタクカルチャー黎明期にくらべれば、きわめて自由度が高く、そして現代的な感覚であるとも個人的には感じる。

一昔前までは、「オタク」とか「おっかけ」と呼ばれたこともあるが、「推し」という表現を得て、「一方的に」、誰か、何かを好きになることがすっかり市民権を得た。(中略)
リアルな結婚、恋愛は「双方向性」を前提としている。しかし、お互いが好きになって結婚するということが減少し、さらに、婚活などにより恋愛感情抜きで結婚するケースも増えてきている。友情結婚という言葉も出てきている。(170〜171ページより)

あるいは、配偶者のことを好きでなくなっても、経済的な理由で離婚できないという夫婦もいるかもしれない。いずれにせよ、そうした状況下において、行き場がなくなった「好き」という感情の受け皿として「推し」が広まったのだ。

次ページ親密性という市場の広がり
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事