世界一幸福な社会は「お金で買える親密性」の賜物 『希望格差社会、それから』が描く日本のリアル

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パチンコやペットなどは、「努力が報われる」「家族で親密な関係を楽しむ」ことをバーチャルに体験できるシステムと位置付けることができる。そのようなシステムが日本で広がっているのは、リアルな世界で、「努力が報われる」そして「家族で親密な関係を楽しむ」という体験が徐々に減少しているからだと思われる。(152ページより)

理由のひとつは、非正規雇用や未婚者が増大し、「豊かな家族生活」をつくることを諦める人が増えているから。そればかりか、正規の仕事に就き、結婚して子どもを育てている人であっても、「努力が報われていないのではないか」「求める愛情が得られていないのではないか」と感じている人は増えているという。

日本におけるバーチャル世界の拡充

なお興味深いのは、著者がここでいうバーチャル世界を「擬似仕事」と「擬似家族(恋愛)」に分類している点である。

戦後日本の人々の希望は、将来的に「豊かな家庭を築く」ことであった。だとすれば、そのプロセスには当然ながら、「仕事」における希望と「家族形成」の希望が含まれることになる。そこから達成感や充実感を得ることで、人々は前へと向かったのだ。

ところが、リアルな世界で豊かな家族生活への希望が失われるとなると、一気に話は変わってくる。豊かな家族形成という「大きな物語」のなかに生きる希望を見い出せなくなったため、部分的に「擬似仕事」「擬似家族(恋愛)」という物語を用いる必要性が生じたのである。

では、「擬似仕事」「擬似家族(恋愛)」とは?  それぞれについて確認してみよう。

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