世界一幸福な社会は「お金で買える親密性」の賜物 『希望格差社会、それから』が描く日本のリアル

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リアルな世界で希望が持てないなら、現実を変革しようとか、現実社会に対して反抗しようとするのではなく、バーチャルな世界で希望をみつけようとする人が増大している。(178ページより)

バーチャルな世界で満足している人が多いからこそ、将来に希望が見出せないにもかかわらず「生活に満足している人」が増える。それこそが、経済が停滞してもデモやストライキは起きず、犯罪も増えない、日本社会が平和で安全な状態を保っている理由ではないかというのである。

希望格差社会における2つの世界

たとえば、非正規雇用者として働きながらパチンコで高揚感を得る人たちは、2つの世界を生きているという。ひとつは、昇進もなく低賃金で働く世界。いいかえれば、努力しても報われないことを実感する世界だ。

そしてもうひとつは、パチンコをしている世界。こちらでは努力すれば報われ(るような気がして)、高揚感が得られるというわけだ。

同じことは、ペットとの交流だけを生きがいにしている人にもあてはまるようだ。家族形成がうまくいかなかった人が、その代わりにペットを家族とみなし、「理想的な家族」のあり方をペットに投影しているということである。

もちろんパチンコを息抜きとしてうまく活用している正規雇用者もいるだろうし、円満な家庭内でペットをかわいがっている人もいるに違いない。しかしその一方に、“現実の世界では格差が埋まらず、努力が報われるという体験ができない代わりに、(パチンコやペットのような)バーチャルな世界”に浸る人もいる。

それが、現実に存在する経済格差や家族格差を見えないようにするための装置として機能しているのではないか。著者はそう推測するのである。

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