NHKドラマ「脚本の完成前でも対価」に見る"覚悟" 連ドラ界を変える画期的な取り組みが始まった

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そのため、脚本のみならず、脚本をもとに画を作るチームの研究、意思統一も徹底的に行った。「画にも力を入れようと思ったため、2倍大変になりました」と、保坂さんがここはディレクターらしく、ぐっと身を乗り出した。

「WDRプロジェクトから始まって脚本がすごいと注目されたのはありがたいことなのですが、それを生かすも殺すも現場次第で、ディレクターの腕の見せ所もやはり現場だと思っています。

今回の脚本は演技や映像化が難しい場面も沢山あったのですが、キャスト、スタッフ含めて現場の皆が前向きに挑戦してくれたことで、ご覧いただいた形に仕上げることができました」

新しいテイストのビジュアルにしたいと、海外ドラマを分析し研究し、撮影監督のインタビューなども読み込んで、海外のクリエーターの思想や哲学を取り入れ、カメラワーク、編集、音楽の入れ方なども参考にした。

脚本が事前にしっかり出来上がっているからこそ、それをもとに画の準備もできた。

NHK
10人全員で海外作品を視聴し、研究した(NHK提供)

参考にした「アメリカの人気ドラマ」

NHKは民放と比べ、早め早めに撮影が進行するほうだが、民放では放送当日まで撮影していることもあるくらい、スケジュールがぎちぎちの作品もある。そうすると、ライブ感のあるドラマはできても、練られたものにはならない。準備に時間をかけることで自ずと作品の質も変わってくるだろう。

例えば保坂さんは、Netflixで配信されているアメリカのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を研究し、陰影のないフラットなベタ明かりと呼ばれるものは、本来、避けるものだが、陰影のある画作りと併用することで、2つの世界観を差別化することを学んだ。

「その撮影監督の記事によれば、『ストレンジャー・シングス』は日常のシーンをベタ明かりで撮影し、モンスターが出てくる異世界は陰影のある画作りにしたとのことでした。

ベタ明かりは忌み嫌われるというかチープになるという固定観念が自分にはあったのですが、結局は使い方次第なんだなと。定石を疑うことの大切さを学びましたし、他の海外ドラマの撮影哲学も色々調べたのですが、非常に勉強になりました」

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