NHKドラマ「脚本の完成前でも対価」に見る"覚悟" 連ドラ界を変える画期的な取り組みが始まった
「ドラマとしては、主人公がピンチに陥れば陥るほど、どうやってその状況を抜け出すのか、見る人を物語に引きつける力が生まれます。ということは選択の岐路に立ったときに、選択を間違えれば間違えるほどスリリングになっていく。
ただ大事なのは、そっちにいったらダメだとわかっているのにいってしまう状況を納得してもらえるように作ることです。視聴者が『絶対ありえない』と思ってしまうようでは、制作側がそうしたいからそうしているだけと思われて、物語から気持ちが離れてしまいます。それでは本末転倒なので、間違ってしまうことの説得力には気を配りました」(保坂さん)
保坂さんは、インタビュー中も絶えず、上田さんに「どう?」と意見を求めていた。脚本作りのときもこんなふうに、複数の脚本家がいて、一人でも納得がいかないという意見があったら、とことん話し合ってすり合わせたのだろう。

この展開は絶対ありえないと考える人が1人でもいたら、立ち止まって、全員が納得するまで考えたという。
「共同脚本と聞いて、皆さん、複数の脚本家がいるから脚本作りが早くできるであろうと勘違いされるのですが、そうではないんです」と保坂さん。決して合理性や時短を目的にしたものではないのだ。
「より多くのアイデアをもとに、1人では書けない面白い物語を作りたいから4人体制でやっていたわけで、作る大変さが軽減されるわけでも出来上がる時間が短くなるわけでもないんです。むしろ収斂する作業については、多くの意見が飛び交う分、より大変だということを実際にやってみて認識しました」
2倍大変になった
さらに、上田さんが「合理性ということでいえば、限られた時間と予算をどこに注ぐ判断をするか。今回はそれが、脚本家の才能発掘と脚本開発だったということです」と付け加えた。
「視聴者の方により大きな満足感を得てもらうために、さまざまなアプローチがあると思います。大規模な海外ロケやVFXに注力するということも、もちろんあります。
でも今回は番組制作の最初期の段階、つまり脚本開発の時点でいかに明確な方針を共有して企画を立ち上げていけるかが重要と考え、そこに従来にないかたちで投資しました。地味ですが、そうした根幹の底上げが最終的なクオリティの向上につながると考えたんです。
そして実際に映像を作っていくプロダクションの段階でも、同じように最初の方針共有が大切だと考えました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら