東大はお得?脱中国した新移民たちの「受験熱」 SNSで合格マウント、文京区の人気が高まる
もっとも努力して日本人コミュニティに溶け込んできた在日中国人は「局地的に発生している中国化」に複雑な思いがあるようだ。
都内の日本企業で10年間働いている30代中国人女性は、「3SK1のことはもちろん知っているし、文京区の小学校で日本語が話せない中国人児童が増えているという話も聞いている。でも文京区が西川口や池袋のようになったら、もう文京区ではないでしょう」と話す。
未就学児を育てるこの女性は、「どこにいても張り合う中国人コミュニティから距離を置いて、子どもをのびのびと育てたい」と、子どもの小学校受験を検討していると語った。
日本の大学は入りやすい
予備校などから情報を得やすい日本の大学入試は、より早くから中国人の“攻略”対象となっているが、こちらも状況が少しずつ変わっている。
日本の大学は、グローバル化の潮流に加え少子化という切実な理由で、2010年代から留学生を積極的に受け入れるようになった。
同じ時期に中国の大学に勤務していた筆者は、日本の国立大学の教職員から「大学院の定員割れを避けるために、中国人留学生を獲得できないだろうか」と相談を受けることが何度かあった。
中国では大学院卒の方が就職に有利になるという価値観が強くあり、それゆえに日本の大学と思惑が一致していたが、「日本の大学院は中国に比べて入りやすい」という認識が形成されるようになると、旧帝大や早稲田などブランド力のある大学院を目指す動きが強まり、さらに中国の大学入試を回避して日本の大学進学を見据える家庭も増えた。
子どもが日本の旧帝大に通う張愛さん(仮名、中国在住)は、「中国の教育システムには皆不満を持っている。経済的な条件が許す人は、子どもが小さな頃から留学を念頭に入れている」と話す。
夫婦で大学教員をしている張さんは「国の教育行政を司る教育部の幹部たちが、自分の子どもをアメリカに留学させている。それを見たら私たちだって子どもを海外に行かせる」と語り、「清華、北京大学の世界ランキングは東大より高いし、中国でトップ10に入る大学を目指せるなら中国で進学する。そこに届かないなら、海外に出てその国のトップレベルの大学を目指す。特に日本はいい大学に入りやすくてお得。私が勤務しているのは中堅大学だが東大院に進学する学生も年々増えている」と、中国人インテリ層の流儀を説明した。
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