東大はお得?脱中国した新移民たちの「受験熱」 SNSで合格マウント、文京区の人気が高まる
早稲田アカデミーに通っている保護者のWeChat(中国で普及しているメッセージアプリ)グループは上限の500人に達し、常に空きを待っている人がいるそうだ。学年ごとのWeChatグループも数百人が参加している。
長女が女子御三家中学に通う彭立元さん(仮名、40代)は、「長女は小学3年生の11月にSAPIXの入塾テストを受けたが、今は小学1年生、小学2年生から塾に通うのが普通になっている」と話す。
2010年代に20~30代の在日中国人に子育ての方針を聞くと、「のびのびと育てたい」と返ってくることが大半だった。
中国・深圳に本社があるメガテック企業で働いていた30代の男性は2018年、長女が小学生になるタイミングで日本のIT企業に転職し、家族で日本に移住した。
男性は当時、「大学入試だけを目的にした中国の詰め込み教育を、子どもに受けさせたくない。人と比較され続ける人生はしんどい」と話していた。
早稲田大学の大学院を修了し日本で就職した女性は30歳だった2019年、「日本で出産し、小学校まではのびのびと日本で育てる。中学は中国で鍛えてもらい、高校はインターナショナルスクールに進学して英語圏の大学に進学させる」という「子育て攻略計画」を筆者に披露した。
目指すところは箔の付く最終学歴、というのは揺るぎないにしても、中国人にとって日本での小学校生活はひと時の「オアシス」と位置付けられていた。
SNSで合格マウント
それが2020年代に入ると、小学校低中学年から塾通いさせる在日中国人がねずみ算式の勢いで増加した。
きっかけの一つは、コロナ禍の休校だ。中国では即座にオンライン授業に切り替わったのに対し、デジタル化が進んでいなかった日本の学校現場は長期間混乱した。「中国の友達から話を聞くうちに我が子の勉強の遅れが心配になった」という話を、当時多くの在日中国人から聞いた。
それぞれが塾で得た中学受験の情報は、SNSやメッセージアプリを通じて在日中国人の間で瞬く間に広がった。
前述の中国メガテック企業を退社して日本に移住した家族も例外でない。「人と競い続ける日々」から逃れたいと日本に来たのに、妻が長女の中学受験にのめり込んだ。
この男性は「中国語で『攀比(panbi)』という言葉がある。あらゆることでマウンティングしあうという意味で、深圳で住んでいたマンションのエレベーターには、『隣の家の子が塾に通い出した。もっといい塾に行こう』と煽る塾の広告が貼られていた。中学受験が在日中国人の新たな攀比のツールになっている」とため息をついた。
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