「怒りと恐怖」会談に見るゼレンスキーの指導者像 優位な立場を利用するトランプ大統領とは対照的だった

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さて、今後の展開はどうなるのでしょうか。

怒りは、目的を阻む障害を破壊しようとする感情です。ウクライナの鉱物資源が欲しいトランプ大統領は、今回の会談で提示した条件では合意は難しいとわかり、この障害を破壊すべく、交渉を続けようとするでしょう。

怒る=交渉終了ではないのです。目的を達成したいからこそ力強い感情である怒りが生じるのです。ウクライナを素通りしたロシアとの交渉を強化する線も考えられなくはないですが、あくまでもゼレンスキー大統領との交渉再開を企図していくものと期待しています。

ゼレンスキー大統領が見せた軽蔑の微表情

実はゼレンスキー大統領は、トランプ大統領の発言の端々に軽蔑の微表情(※)を生じさせていました。トランプ大統領の考えに不道徳さを感じ、欧州など友好国のバックアップを求め、本音としては、そちらに交渉の力点を置きたいと考えている、と推測します。だとしても、アメリカなしの安全保障が難しいことは誰もが承知するところです。

(※)0.5秒ほどで消える、抑制できない真の感情の漏洩のこと

そのため、ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領との対話を維持しつつも、欧州諸国との連携を強化し、バランスを取る道を模索せざるをえません。最終的に、アメリカとの関係をどのように調整するかが、ウクライナの安全保障戦略のカギを握ることになるでしょう。

■参考文献
Sharma, S., Elfenbein, H. A., Sinha, R., & Bottom, W. P. (2020). The Effects of Emotional Expressions in Negotiation: A Meta-Analysis and Future Directions for Research. Human Performance, 33(4), 331–353. https://doi.org/10.1080/08959285.2020.1783667 
清水 建二 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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しみず けんじ / Kenji Shimizu

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

公式サイト:https://microexpressions.jp/
 

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