トランプが進める｢公的機関の破壊｣は合理的だ 古い仕組みが温存しているのは大問題

2025年2月26日、ホワイトハウスで開かれたトランプ第2次政権の初閣議で発言するイーロン・マスク氏（写真：ブルームバーグ）

世界中の公的機関が危機に瀕している。ドナルド・トランプ政権は世界一の富豪イーロン・マスクと手を組み、公的機関を解体すべき敵とみなしている。資金削減と地政学的分断に直面し、多国間組織はこれまで以上に弱体化しているように見える。

USAID（アメリカ国際開発庁）を「薪割り機に入れる」と豪語し、教育庁の廃止を準備しているトランプとマスクによる攻撃は、悪意があり裏目に出るかもしれない。

しかし彼らは、公的機関が半世紀前と同じでなければならない正当な理由がないことを私たちに思い起こさせている。既存の制度を守るだけでは、適切な対応とは言い難いといえるだろう。

人類が直面する課題

有識者による政治・経済コラムを翻訳掲載。週刊東洋経済掲載分だけでなく、多くの選りすぐりのコラムもタイムリーにお届けする。バックナンバーはこちら

AI（人工知能）の形成やメンタルヘルスへの対応から、エネルギー転換や産業政策の管理まで、人類が直面する最大の課題のうち、効果的な制度なしにうまく対処できるものはほとんどないだろう。 しかし、今日の省庁、委員会、公共サービス、規制当局は、こうした新たなニーズに対応するには不向きであることが多い。

では、代替案はどうあるべきなのだろうか。政府は常に、法律の執行、子どもたちの教育、徴税、治安の維持など、その業務を遂行するための機関に依存してきた。

そして、二酸化炭素排出量の削減や組織犯罪との闘いなど、新たな任務のために新たな機関を発明することも少なくない。

資金が削減され、攻撃される中、改革者たちは公共の利益をよりよく表現すること、効率を向上させるために新しいツールやテクノロジーを最大限に活用すること、そして国民の信頼を回復することに集中しなければならない。

しかし、今日の制度設計の選択肢は、一昔前とは大きく異なっている。