"思わず号泣"鈴木おさむ新作に集まる「共感の声」 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」
その会議シーンこそ前半のメインであり、本作全体の明るく温かいポジティブな空気感を象徴する。放送作家として数多くの名作バラエティを手がけてきた鈴木おさむ氏の真骨頂でもあるだろう。
高校生男子4人の会議でのテンションの高い掛け合いは、小ネタの応酬のテンポのよいコントのよう。その会話シーンは、幼なじみであり、ともに時間を共有して成長してきた4人の深い絆を、どんな言葉よりも鮮明に映し出していた。それが本作の核になる。
しかし、そんな楽しい時間だけではない。彼らは村の18歳の男子に訪れる試練に向き合おうとしていた。
視野を広げ思考を促す村の言い伝え
18〜20歳の間で、ひとつだけ願い事をかなえることができると知った田舎の小さな村の高校生は、何を考えるか。自分の将来の夢のための願いか。誰かの幸せのためや、生まれ故郷である村を豊かにするための願いか。
どれも間違いではない。いろいろなことを考えるなかでは、さまざまな欲求がぶつかることもあるかもしれない。私欲だって当然あるだろう。そこには葛藤が生まれ、人生を俯瞰する視点も生まれる。
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村の言い伝えは、自分の目の前のやることや、すぐ身の回りの出来事が社会のすべてになりがちな思春期真っ只中の多感な18歳に、視野を広く持たせ、思考を促すためのものかもしれない。そう考えるとしっくりくる。
それは間違いなく人としての成長につながる。ファンタジックな物語のベースには、現実社会に通ずるところがあるから、登場人物たちの言動にも感情にもリアリティがあり、そこに共感が生まれる。
本作は、そんな18歳の姿から地方の村における社会課題も映している。
村の子どもたちには夢がある。しかし、その実現のためには、体験や学ぶ機会のほか、家庭の経済状況なども含めた社会環境において、都市部との歴然とした格差がある。
家業を継ぐ若者が少ない、事業の担い手不足に陥る過疎村の現実がある一方、将来の選択肢が狭まる若者たちのリアルも、豊かな日本社会の一面として投げかける。
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