「日本の高層ビルは安全」と信じるのが危ない理由 高層ビルは「わかっていないこと」が多数ある

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ここまで、タワーマンションの耐震性にまつわる「期待外れな話」を紹介しました。

日本の耐震技術はすごいんだ、世界でもトップクラスなんだ、と思っていたとしたら、さぞかしがっかりしたことでしょう。

ただ、だからと言って、すべてを解き明かすまでは新しい建物はつくらせない、ということもできません。建築は経済活動の一部であり、新しい住宅やビルの需要に応え続けなくてはならないからです。

建築には「わからなくてもできる」ことがある

よく「わかる」と「できる」は違う、と言われます。頭ではわかったつもりでいても、実際にやってみるとできない、ということは多いです。

しかし、建築においては、わからなくてもできることがあります。どんな地震が起こるかわからなくても、一部の建築士が耐震のことをあまりわかっていなくても、あるいは高層ビルがどう壊れるのかわからなくても、まずまず安心して暮らしていける街が実現されています。

『教養としての建築』
『教養としての建築』(かんき出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

まだまだわかっていないことが多い、ということさえ念頭に置いておけば、ある程度は「結果よければそれでよし」なのです。もちろん、いつまでもわからないままで放置しておいていいわけではありません。わからないなりにどうすればいいかを探ること、わからない領域を少しずつ減らしていくことは非常に重要です。

2023年、世界最大の振動台である「E-ディフェンス」の隣に、「E-アイソレーション」という巨大な試験機が完成しました。これにより、これまで試験することのできなかった実大サイズの試験体を用いることができるようになりました。

今後活用が進むことで、新たな知見がいくつも得られることでしょう。

まだまだ期待外れな部分も多いかもしれませんが、今後の発展には期待していただきたいと思います。

バッコ博士 構造設計一級建築士

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ばっこはかせ / Bakkohakase

構造設計一級建築士・京都大学博士(工学)・コンクリート主任技士。耐震工学のエキスパートで、専門は超高層ビルの振動制御。大手建設会社にて構造設計および開発業務に従事。電波塔から超高層ビルまで、幅広い建物を担当。考案した独自の構造システムが超高層ビルに適用されている。免震・制振に関する特許出願20件超。

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