「日本の高層ビルは安全」と信じるのが危ない理由 高層ビルは「わかっていないこと」が多数ある

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被害が出てしまうのは大変残念なことではありますが、それらの被害を調査することで、木造住宅が地震によってどのように壊れるかについて、多数の知見が得られています。

しかし、高層ビルではこうした知見がほとんどありません。木造住宅と比べて建物の数が少なく、日本全国に隈なく分布しているわけでもありませんので、地震に見舞われる可能性が低いからです。

また高層ビルの歴史自体がまだまだ浅いこともその要因です。景観を維持するためだったり、火災や地震による被害を抑えるため、以前は建物の高さに100尺の制限がかけられていました。技術の進歩などにより1960年代に規制が緩和されるまでは高層ビルを建てることができなかったのです。

倒壊実験は容易ではない

建物を壊れないように設計するには、建物がどう壊れるかを知らなければなりません。木造住宅はどのように壊れるかがよくわかっているため、そこをケアした適切な設計が可能です。

それに比べ、高層ビルについてはわかっていないことが多数あります。よくわからないまま設計がなされているという側面は否めません。

高層ビルの倒壊事例の知見が足りないのであれば、実験により確認するしかありません。試験体として高層ビルをつくり、それを壊せば詳細なデータが得られます。

しかし、ことはそう簡単ではありません。高層ビルは大きくて重くて強いのです。

例えば、タワーマンションの柱の断面は一辺が1m程度の正方形になっています。使用しているコンクリートの強度も高く、常時3000トン程度の重量を支えるような設計となっています。この柱に横方向から300トンあるいはそれ以上の力を加えることで、ようやく壊すことができます。柱1本を壊すだけのことですが、それでもこの規模の試験ができる装置は数が限られます。

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