歴史教科書で学んだ「渡来人」の本当の正体 古代人のDNA解析でかつての「定説」が覆った
それゆえ多くの研究者は、古墳時代に大陸の先進文化を伝えた、限られた人数の人びとを「渡来人」とする見方をとってきた。
現在の高等学校の日本史は「歴史総合」と「日本史探究」に分かれているが、後者の教科書である『詳説日本史』(山川出版社)に、次のようにある。
「この間(5世紀ごろ)、倭(わ)は百済や伽耶(かや)から様々な技術を学び、また多くの渡来人が海を渡って、多様な技術や文化を日本列島に伝えた」
「このような(朝鮮半島への出兵や倭の五王の遣使)朝鮮半島や中国との盛んな交渉の中で、より進んだ鉄器・須恵器(すえき)の生産、機織(はたお)り・金属工芸・土木などの諸技術が、主として朝鮮半島からやってきた渡来人によって伝えられた」
しかし覚張氏に指摘されたような、古墳時代の日本列島の人口の半数以上に及ぶ朝鮮半島北部・中部からの移住者すべてが、何らかの先進技術の持ち主であったわけではない。
さらに私は、きわめて多数の移住者を受け入れても、古墳時代の社会の構造がほとんど変わらなかった点にも注目したい。
人口が大幅に増加しても、ヤマト政権の君主は、皇室の祖先にあたる大王のままであった。弥生時代以来の各地の首長(豪族)が、日本列島に割拠(かっきょ)する形も、もとのまま保たれていた。
日本人のルーツと「渡来人」の関係
令和六年(2024)、4月になって理化学研究所が、覚張隆史氏らの新見解を補う研究成果を発表した。寺尾知可史(ちかし)氏をチームリーダーとする共同研究グループが、日本人の先祖は三系統から成ることを明らかにしたのである(『全ゲノム解析で明らかになる日本人の遺伝的起源と特徴』〈Science Advances2024年4月17日号〉)。
この共同研究グループは、バイオバンクジャパンから提供された3,256人の日本人の全遺伝情報(ゲノムとは個々の遺伝情報を全部集めたもの)を分析した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら