追い込まれたドコモ、「値下げ競争再燃」へ火蓋切る 競合も追随、業界は"ゼロサムゲーム"加速か

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総務省によると、ドコモの市場シェアは2020年3月時点で37.7%だったが、2024年3月には34.5%まで低下している。シェア低下の一因として挙げられるのが、昨年までドコモが競合他社の展開する格安の小容量帯プランを持っていなかったことだ。

携帯電話契約数の事業者別シェア推移

格安の小容量帯プランの導入は、キャリアから通信回線を借りて事業を展開するMVNO(格安スマホ業者)への打撃が懸念され、「最大手のキャリアとして、MVNOを潰さないため」(複数の業界関係者)に、ドコモは慎重だったとされる。しかし結果として、ドコモはサブブランドで低容量帯の格安料金プランを持つ競合他社に競争力で劣後し、ソフトバンクのワイモバイルやKDDIのUQモバイルへの流出が続いた。

耐えきれなくなったドコモは2023年7月、対抗策として、小容量・低価格を志向するユーザー向けの新プラン「irumo(イルモ)」を開始した。ただ、ドコモにとってイルモの導入は、他社への流出抑制に効果がある反面、ARPUの下押し要因になることも意味した。実際、導入後は自社の高価格帯プランからイルモに乗り換えるケースも多いとみられており、減収要因となっている。

コンシューマ通信事業では、競合のKDDIやソフトバンクが官製値下げの影響から脱して上昇軌道に乗せつつあるのに対し、減収傾向から抜け出せないドコモ。ここにきて、後手になった対応のツケが回ってきているようにも見える。

NTT社長がドコモに示した「必達目標」

さらにこの間、ドコモは別の大問題にも悩まされていた。「かつては『安心安全』のドコモ」(業界関係者)と信頼されてきた、根幹の通信ネットワークで生じた品質問題だ。

昨年はドコモの通信品質をめぐり、「つながりにくい」といったユーザーの声が相次いだ。通信規格5Gの普及に当たり、競合他社と違って4G向け周波数を5Gに転用する戦略をとらず、5Gのネットワークを「広く薄く」面的に構築しようとしたため、データ利用が集中する都市部の基地局整備が遅れたことなどが原因だった。即座に品質改善に注力してきてはいるものの、ユーザーの信頼を大きく損なった感は否めない。

シェア低下、そして品質問題――。本業で苦しむドコモに対し、業を煮やしたのが親会社であるNTTだ。

NTTの島田社長は8月の決算会見で、「ドコモはずっと顧客基盤を減らしてきた歴史があるが、そろそろ限界だ」と言及。9月の投資家向け説明会でも、「35%は絶対守らないといけないシェアだ。これ以上下がるのははっきり言って、絶対に許しがたい水準で、ここから反転させるのは必達だ」と語気を強めた。前田社長に対して、「コストをかけてでも、顧客基盤は守ってほしい」との要望を伝えているという。

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