「『経済的に岩手大学以外行かせられない』と言われたのです。選択肢を探せばあったと思うのですが、父は思い込みが強い人なのでどうしようもありませんでした」
さらに完全に進学を諦める決定的な出来事が12月に起こります。予備校の担任の講師との三者面談がきっかけでした。
許せなかった先生からの言葉
「『お前は一橋に行くには学力も努力も足りない』と言われて受験をやめさせられたんです。その言葉自体は受け止めないといけない部分もあったのですが、面談の終わりに『将来、お前が一橋に入っても、学生生活がつまんねーと思うぞ』と捨て台詞を吐かれたんです。それが許せませんでした。目指していた一橋大学を受けて落ちるのなら納得できます。でも、記念受験もさせてもらえなかったのが悔しくて、まったく納得できませんでした」
結局、この年は岩手大学に出願して合格します。センター試験の結果は72.5%(580/800点)。一橋大学は85%程度(680/800点)を取らないと合格が難しいため、厳しい数字ではあるものの、挑戦すらできずに1年の頑張りを試す機会を奪われてしまったことが、彼の人生に暗い影を落とすことになったのです。
「父親と担任のせいで一橋に行けなかったとずっと思っていたのです。だから、後悔を払拭するためにも将来必ず再受験しようと決めました。どうせ、大学を辞めさせてはもらえないから、受験のための勉強を4年間、大学でやろうと思ったのです」
岩手大学に入ってからのささちかさんは「ある程度高い偏差値まで伸ばせたところで、一橋レベルまで持っていくことに挫折を感じた」そうで、受験科目を英語から、得意だったドイツ語に変更します。
すべては一橋大学に受かるため。決意を固めた彼は、大学で勉強をし続けました。
「多くの人は大学に入ったら勉強に対するモチベーションがなくなります。でも、大学ってその道のプロがいっぱいいる場所なんです。だから私はドイツ語の言語学や社会の授業を熱心に聴き、授業後に大学教員を捕まえて添削をお願いしていました」
この主体的に勉強を進める様子は、かつての学校の課題を受動的にこなしていたささちか少年から劇的に変化していました。そして、その勉強への姿勢はまさに一橋大学が求めていることでもあったのです。
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