AGC、3期連続下方修正で「過去最悪赤字」の言い分 事業の多角化を進めても業績はなお不安定

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確かに2016年度の化学品事業の営業利益は400億円で、2015年度は305億円、2014年度は241億円だった。当時と比べると利益水準は間違いなく上がっている。ただ、化学品事業についても見通しの甘さは否めない。

2023年度は化学品事業の営業利益を期初計画の予想で850億円としていたが、着地は648億円になるなど、たびたび、下方修正の原因になっているのは事実だ。

少なくとも2022年度の半ば、化学品事業が1000億円を大きく超える営業利益を稼ぎ出すことを前提に「これからも高水準を維持できる」とトップが説明した。この説明を真に受けた投資家にとっては、現状はネガティブサプライズ以外のなにものでもないだろう。

不安定な業績は市場評価にも打撃

不安定な業績は当然、株式市場での評価にマイナスになる。8月1日の下方修正を受けて、AGCの株価は7月31日の5399円から8月5日には4123円まで24%も急落(ともに終値)。足下でも4600円前後で、PBR(株価純資産倍率)は0.6倍台と低迷している。

CFOの宮地伸二氏は「(多角化してきた)各事業の足並みが全部良い形で揃うことがない中、時々、大きく足を引っ張る事業が出ている。それが投資家に嫌われてしまっている」と分析する。ウクライナ戦争に端を発するロシア関係の一過性損失もあったにせよ、3期連続の下方修正、うち2期で最終赤字(2022年度実績と2024年度の見通し)となるようでは株式市場からの信頼は得られない。

来2025年度は減損損失などが消えるうえ、金利の引き下げによってアメリカでのCDMOの復活が見込め、業績は大きく上向く公算は高い。AGCは2026年度には過去最高レベルの2300億円以上の営業利益を狙う目標を維持する。株式市場からの信頼を取り戻し、株価を上げていくには、最低でもこの目標を達成する必要がある。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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