東京電力の消えない「公的管理」の不安、今期は営業赤字に転落

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東京電力の消えない「公的管理」の不安、今期は営業赤字に転落

東京電力の今2012年3月期は営業赤字に転落する公算だ。会社側が今期初めて出した業績予想によると、今期売上高は前年同期比1%減の5兆5130億円、原発稼働率減少に伴う燃料費の増加などによって営業損失は2030億円(前期は3996億円の黒字)と、利益については「会社四季報」秋号(9月発売)の予想と同程度となる公算だ。東洋経済では、ひとまず会社側の予想を踏襲するが、今後取材後、改めて予想数字を精査することとする。

同社が4日に発表した11年1~6月期(上期)は売り上げが前年同期比7・7%減の2兆5027億円、営業損失は606億円(前年同期は2358億円の黒字)となった。売上高は燃料費高騰で販売単価こそ上昇したものの、電力の利用制限などに伴い販売電力量が減少したことで落ちこんだ。営業損益は人件費や修繕費、減価償却費などが減った一方、火力発電の稼動増により燃料費が大幅に増えたため赤字となった。

また、営業外の社債償還額が増えたことに加えて、特別損失として福島第一原発1~4号機の廃炉などにかかわる費用を1850億円、原発事故関連の損害賠償費用8909億円を計上。賠償期については、原子力損害賠償支援機構から得た交付金を特別利益として計上しているが、それでも6272億円の営業赤字(前期は922億円の黒字)に転落した。これにより、9月末時点での自己資本率は6・3%と、3月末から一段と悪化した。

一方、12年3月期(通期)は引き続き販売電力量の低迷状態が見込まれるものの、販売単価上昇で売り上げは前年同期比1%限定度にとどまる公算。が、営業損益については原発稼働率が一段と下がることに伴って燃料費のさらなる膨脹が見込まれる。上期同様、人件費や修繕費などを削ったところで燃料費の高騰をカバーするのはきわめて困難だ。一方、今後、本業とは関連性の薄い有価証券や不動産などを売却していくこともあって、最終損失は6000億円と、上期よりは縮小する見通しを立てている。

東電をめぐっては、「債務超過にさせない」ことを前提に今年8月、原子力損害賠償支援機構法が成立。十兆円規模ともされる損害賠償金に必要な資金を、新たに設立された支援機構が交付金という形で提供する(交付金は上記の通り、特別利益として計上)ことで賠償金の膨張によって東電の財務が毀損されるという事態を避ける仕組みが作られている。東電は支援機構とともに、10月末にこの交付金受け取りに必要な「緊急特別事業計画」を枝野幸男・経済産業大臣に提出、4日には大臣から承認を得ている。

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