アクセンチュア

21世紀型「製造業のグローバル化」は何をもたらすか 「聖域」視されていた設計開発部門の変革が必要

拡大
縮小

設計開発の「聖域化」が技術者を不利な状況に

すでに一部の企業では積極的に設計開発部門のグローバル化を進め、成功している企業も存在する。しかし「設計開発部門については、グローバル化が進まない独特の要因があります」と相馬氏は指摘する。

相馬修吾
アクセンチュア製造・流通本部
マネジング・ディレクター

相馬氏の説明によると、設計開発部門では、拠点に技術者を集約し、「すり合わせ」によって価値を生むというビジネスモデルが展開されてきた。技術者の自由な発想が必要だという理由から、現場主導で物事が決定する、ある意味ガバナンスの効かない「聖域化」された状態にあったという。しかしこれでは技術者の持つ情報が属人化され、共通言語がないために他の技術者に伝承されないという問題が発生する。そのため、設計開発部門をグローバル化しようとしても、現地で採用した技術者に開発業務を教え込むことに時間がかかり、その後マーケットが変化してもそれに対応することができず、結果的に身動きのとれない状況が生じてしまうことになりかねない。

そもそも、設計開発には、基礎技術の研究開発や次世代製品開発といった高度な技術が求められる業務から、量産開発や派生開発の一部など、技術的に容易な作業を多く含む業務までさまざまな業務が存在する。その中で日本の技術者は既存設計の軽微な修正やそのテスト業務といった、量産開発や派生開発の中でも技術難易度が低く業務量の多い仕事に多くのエネルギーを費やしている。「この状況が続くと、将来的には日本の技術者は海外技術者との競争に迫られ、コストが高い分日本人技術者は不利になります」と、相馬氏は危惧する。

次ページグローバル分業成功のカギは設計開発の工業化
お問い合わせ