空前の円安でも苦戦、電子部品"反転"の次なる本命 中国とスマホは望み薄、車載とAI関連が期待大

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またTDKのコンデンサーは、自動車向けの高性能・高単価品が中心。顧客は安全性への配慮から簡単には廉価品へ切り替えられない。中国のEV関連部品で価格競争が激化し、モーター世界大手のニデックが駆動部品で部門赤字となる中でも、TDKは健闘している。

主戦場だったスマートフォン向けも低迷が続く。村田製作所によると2024年度の世界スマホ販売台数(部品取り込みベース)は、前年度比3%増の11.8億台が見込まれる。ピークだった2016年度の15.6億台には遠く及ばず、かつて電子部品業界の成長を牽引した勢いはない。

近年はiPhoneをはじめとするハイエンド品の価格が上昇傾向にあり、消費者の買い替えサイクルが長期化したのが原因だ。カメラなどの局所的な性能はモデルチェンジごとに良化しているものの、日常的な使用には旧式でも十分な機能を備えていることが、この傾向を後押しする。

さらにアメリカが半導体関連の輸出規制を強化した2020年、中国市場で隆盛していたスマホ大手ファーウェイが失速。ほかの地元メーカーが空いたシェアを奪おうと増産体制を整えたが、結局はAppleやサムスン電子に敗北し、大量の在庫を抱える羽目になった。

長い調整局面は2023年度後半に底を打ち、中国のスマホ市場は上向きつつある。ただ、台数が増加しているのは新興国向けの低価格帯機種が中心だ。太陽誘電の担当者は前期の大幅減益について、「値段が下がりやすい中華スマホ関連部品の割合が増えたため」と説明している。

生成AI搭載スマホはこれから

明るい話題もある。サムスン電子は4月、生成AIを搭載した「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」の2機種を日本で発売。ほかの競合セットメーカーも追従する流れで、買い替え需要の喚起が期待される。

ただ現状はソフトを載せているだけで基本的な設計は変わらず、部品の搭載点数が増えるわけではない。電子部品メーカー各社への好影響はまだ限定的との見方が強い。村田製作所の中島規巨社長は「AIチップを搭載したスマホの登場は、来年以降になってくると思う」と述べた。

中国需要の失速やスマホ需要一巡などの厳しい事業環境に直面した電子部品業界だが、ようやく長いトンネルを抜けつつある。自動車やAI関連を軸に反転し、新たな成長曲線を描けるか正念場だ。

石川 陽一 東洋経済 記者

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いしかわ よういち / Yoichi Ishikawa

1994年生まれ、石川県七尾市出身。2017年に早稲田大スポーツ科学部を卒業後、共同通信へ入社。事件や災害、原爆などを取材した後、2023年8月に東洋経済へ移籍。経済記者の道を歩み始める。著書に「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」2022年文藝春秋刊=第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補、第12回日本ジャーナリスト協会賞。

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