"G"の悪徳駆除業者 同業者が明かす高額請求手口 セールストークには要注意 100万円の請求例も
Aさんの話を聞き終えた鈴木さんは、まずはゴキブリの侵入経路を特定すべく、キッチンやトイレの換気扇、流し台や洗面台の下の水栓周りなどを順番に確認していく。
Aさんと費用を相談しつつ、侵入経路の可能性が高い「すき間」を、粘着性のシートやコーキング剤と呼ばれる詰め物でふさいでいった。優先順位が低く、すき間を埋めなかったキッチンの換気扇内には、ベイト剤と呼ばれる毒餌を設置した。
鈴木さんの作業中、ゴキブリの成虫や卵はもちろん、住みついている痕跡も一切見当たらなかった。前日の業者に対して、返金依頼などの行動を起こすのかとAさんに尋ねると、既に策を講じているという。
「クレジット決済のとき、業者がカードリーダーを持っていなくて、代わりにカード番号とセキュリティー番号を聞かれたんです。でも有効期限は聞かれなかったから教えずに、業者が帰った後すぐにカードを止めました。
今朝は消費者センターに相談して、クーリングオフすることにしたので、お金はとられずに済みそうです。業者には、『有効期限教えて下さい』ってショートメールで追いかけられてますけど、無視してて……」
そんな話をしていると、突然「ピンポーン」とチャイムが鳴った。インターホンの画面を見て、「あ、まさに昨日の人だ!」とAさん。なんと、代金を回収しそびれた作業員本人が、再び訪ねてきたのだ。
Aさんは玄関で応対し、消費者センターやカード会社に連絡の上クーリングオフすることや、ちょうど別の業者が家にいることを伝えると、作業員は「そうですか……」とそそくさと帰っていった。
一連のやりとりを聞いた鈴木さんは、「この時期(悪徳業者が)増えてくるんですよ」と話しはじめた。
高額請求の判断基準は?
「僕がこの間担当したお客さんなんて、一戸建ての家全体で駆除費用100万円って言われたらしくて。でもイケイケの方だったので、その場で作業員を正座させて説教したら、『人や家を見て金額を変えてます』って白状したらしいです(笑)」
Aさん宅での作業は、約1時間。費用はコインパーキング代1400円をふくめた4万3100円(税込み)だった。鈴木さんは最後に、「もし次に出たらキッチンの換気扇か玄関が侵入経路だと思うので、またご相談ください」と伝え、部屋を後にした。
次の依頼が来るまでは、車の中で待機する。ゴキブリは夜行性のため、緊急SOSは夜間が多い。9時間のシフト中、多い日だと20件ほどの依頼が舞い込む。害虫獣SOSは東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を対象エリアとし、基本的には30分~数時間で現場に駆けつけるという。
待機中、快く取材に応じてくれた鈴木さん。まず聞いたのは、悪徳業者の見分け方だ。高額請求かどうかを判断する、目安となる金額はあるのだろうか。
費用は作業内容によるので一概には言えませんが、ポイントは、経路遮断などの根本対策を行った上での金額かどうかです。Aさんが昨日依頼した業者は生体の駆除や薬剤散布しか行わなかったようですが、悪徳業者ほど経路遮断の知識がないケースが多い。
しかも、Aさんが渡された明細を見ると、卵処理が2万円となっていました。卵を取り除いてつぶすだけの作業になぜ2万円かかるのか、僕が聞きたいくらいです」