「形」にとらわれず、
ポテンシャルのあるビジネスにチャレンジを。
―― 日本において産官学連携が本格化して十数年になりますが、成否を分けるポイントがあるとすればどのような点でしょうか。
原山 たとえばTLOなどで成功している大学を見ると、「待ち」ではなく、「攻め」の姿勢のところが成功しています。論文を書いて、ネットに掲示して「誰か使ってください」というのでは、企業にとって自社にとって価値があるどうか判断できません。
そうでなく、「われわれの大学はこんなことができるのですが、御社と一緒に何かできませんか」と、早い段階から発信することが不可欠です。逆に学内では日ごろから教員を訪問し「先生はどんなことを研究しているのですか」と話を聞くことが必要です。つまりさまざまな関係者を訪問し、足で稼ぐスタッフが大切なのです。
このような人材に求められるのは専門知識以上に「この人に相談したい」と思わせる人間性です。日本でもようやくこのような人材が育ってきましたが、まだ不足しています。その育成が急務であると感じています。
前例にとらわれず、
変革につながる新たな挑戦をしてほしい
―― グローバル化が進展し、日本の企業にも国際競争力の強化が求められています。こうした中で、企業や大学は、産官学連携にどう取り組むべきでしょうか。
原山 企業については、過去の習慣や前提条件に縛られない、変革につながる挑戦が求められていると思います。自社が持っている力をフルに使うとともに、足りないところは、社外の人たちを巻き込むことも必要でしょう。「その事業に投資して大丈夫か」ということも大切ですが、それだけでなく、ポテンシャルのある新たな製品やサービスづくりも試してほしいところです。
その点で、大学には、グローバルな動向など、最新の情報が集まっています。技術移転にとどまらず、さまざまなプロジェクトで、企業と大学が協力する機会が増えるといいですね。日本のあちこちで、そのような取り組みが行われ、世界にインパクトを与えるようなビジネスが生まれることを期待しています。