渋澤 健(コモンズ投信取締役会長) × うちだまさみ(フリーアナウンサー)
「自分が納得できるものに投資しよう」
東京証券取引所
うちだ 渋澤さんは、「コモンズ30ファンド」や「ザ・2020ビジョン」といった日本株のファンドを運用するコモンズ投信の取締役会長ですが、ご自身の投資の体験談からお話いただけますか。
渋澤 20代から金融業界にいましたので、プロとして投資はしていました。ただ、もっぱら債券と為替のトレーダーでしたから、職業人として株式投資の経験はありませんでしたね。
うちだ 個人的に株式投資をしたことは?
渋澤 自分が30代になってからです。あれは、外資系投資銀行に転職した時ですから、1994年の話です。その投資銀行にはプライベート・アカウントといって、社員各人の口座があり、それを通じて株式投資ができたのです。そこで人生初の株式投資を経験しました。
うちだ どの企業に投資したのか覚えていらっしゃいますか。
渋澤 覚えていますとも。芸が無い、日本を代表する2銘柄に投資しました。ソニーと新日鉄です。
うちだ その結果は?
渋澤 今でこそ長期投資の重要性を説いて回っているわけですが、当時は株式投資の経験が無く、思いのほか、債券や為替と比べて株価の値動きが大きかったため、両銘柄とも損切りして終わりました。それから試行錯誤です。98年から99年に金融不安で株価が大きく下げ、額面50円割れの銘柄が続出した時、住友金属を40円台で買いました。一時は39円まで下げたのですが、それが底値で、その後、株価は倍になりました。そこで少しだけ売った後、さらに株価が200円、300円、400円、500円と値上がりする過程で徐々に売却を進め、最終的に600円で持ち株を全部売りました。平均すると300円前後で売れて、その後はしばらく200円台に戻りました。この時学んだのが、利食いをする時は値上がりする過程で、少しずつ売却するべきということです。もちろん今から振り返ってみると、ずっと持っていた方が遥かに儲かったので、やっぱり、長期投資かもしれません(笑)。
うちだ いままでの株式投資においての最大の失敗は?
渋澤 それこそ最初に買った2銘柄は損切りでしたが、それは自分の判断の失敗例です。わが株式投資の最大の汚点は、人から言われた銘柄に投資したことですね。この銘柄は結局、会社そのものが倒産して、ただの紙切れになりました。
うちだ そうした失敗点を踏まえて、これから株式投資を始めようとしている方に伝えておきたいことはありますか。