脱炭素化加速へ、e-dashが示す「可視化のその先」 CO₂排出量把握に重要な「3つのポイント」とは

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e-dashダッシュボード画面
CO₂排出量の可視化・削減サービスプラットフォーム「e-dash」
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、CO₂排出に関する情報開示の動きが急激に進んでいる。サプライチェーン全体に積極的な開示が求められている今、脱炭素化の推進はあらゆる企業において喫緊の課題だ。その第一歩として重要なのがCO₂排出量の算出と可視化だが、いまだ取り組みが進んでいない企業は思いのほか多いという。事業成長のカギを握る、脱炭素化を加速させるための適切な対応方法とは。三井物産からスピンアウトし、脱炭素化の取り組みをワンストップでサポートするe-dashの山崎冬馬社長に話を聞いた

CO₂排出量の開示義務化は「待ったなし」

脱炭素化をめぐる現状について、e‒dashの山崎氏は「企業や行政は大きな変革の真っただ中にある」と話す。背景にあるのは、気候変動に関する情報開示の強化だ。

2021年6月に東京証券取引所が改訂したコーポレートガバナンス・コードにより、プライム上場企業の情報開示が実質的に義務づけられるなど、脱炭素化は企業にとって「努力目標」ではなく「必須の取り組み」へ移行しつつあるが、国内での対応状況は芳しくないという。今後の事業展開に大きな影響を及ぼす課題にもかかわらず、多くの企業で着手が進まないのはなぜなのか。

「そもそも脱炭素という概念自体がいまだ比較的新しいということがあります。そのため、業種や規模を問わず『何から手をつければいいかわからない』という声は、本当に多くの企業や自治体から聞きます」(山崎氏)

何をしたらよいかわからないのでは、情報開示どころではない。「まずは現状を可視化することが重要」と山崎氏は指摘する。

e-dash山崎氏
e-dash 代表取締役社長
山崎 冬馬

「現在のCO₂排出量がどのくらいなのかをまず把握して、いつまでにどのくらい削減するかという計画を定めなくては、具体的なアクションも取れません。2050年カーボンニュートラルまで20年以上という長期間の取り組みになりますので、しっかりとPDCAを回していくための仕組みを整えることが大切です」(山崎氏)

データ入力をもっと簡単に「e‒dash」開発のきっかけ

e-dashバナー

脱炭素化への「最初の一歩」となるCO₂排出量の可視化。山崎氏は「これをKPIとして常時モニタリングできるインフラの整備が、カーボンニュートラルの実現には欠かせない」と考えたのが、CO₂排出量の可視化・削減サービスプラットフォーム「e‒dash」の開発につながったと明かす。

「『e‒dash』は、三井物産のエネルギーソリューション本部という、気候変動問題の産業的解決に取り組むことを命題として2020年に設置された本部の新規事業としてスタートしました。企画段階でさまざまな企業や自治体に話を聞いたところ、CO₂排出量の把握にかなり手間がかかっている現実が見えてきたのです」(山崎氏)

具体的にはデータ入力の手間だ。表計算ソフトに転記していくだけでも大変だが、人力だとミスも発生してしまう。随時更新される排出係数にも対応しなくてはならない。

「単純な数字の間違いもありますし、入力すべき項目がずれることもあります。もっと作業をデジタル化することで、簡単に正確なデータを出すことができるのではないかと思いました」(山崎氏)

可視化推進のキーワードは「簡単・正確・伴走」

簡単で正確、そしてクライアントのニーズに合わせた伴走ができる。この3つを兼ね備え、脱炭素化の加速を支援するサービスとして開発されたのが「e‒dash」だ。「簡単」を象徴するのが、エネルギー関連の請求書をスキャンしてアップロードするだけでCO₂排出量がダッシュボードで見られる仕組みだ。また大手監査法人による排出量の算定方法に対する第三者検証も実施し、開示プロセスにおける「正確性」を高めている。

e-dash使用の様子
簡単な操作で正確にCO₂排出量を把握できるのが「e-dash」の特徴だ

「検査機関によるランダムチェックよりも細かい約1000件のデータセットを用いて、チェックプロセスと算出式・排出係数を突合しています。経済産業省および環境省のガイドラインに沿った正確な算定方式で算出したデータとして、公的機関への報告書にも使用いただけます」(山崎氏)

「ニーズに合わせた伴走」という点については、Scope3の支援が象徴的だ。Scope3の算定には取引先を含めたサプライチェーン全体の連携が必要だが、分類された15のカテゴリのどこに何が関与しているか細かく把握する必要があるのがネックとなる。

「非常に多いのが、『15カテゴリのどれからやればいいのかわからない』というお悩みです。どのデータをどう収集するのか、当社の環境コンサルタントが一緒に整理するところからしっかりと伴走しています」(山崎氏)

CO₂排出量「可視化のその先」も支援

デジタルだけでなく、人による丁寧なサポートを組み合わせた「e‒dash」。導入が近年急伸している大手企業からは、可視化にとどまらず本来の目的であるCO₂排出量の削減実行まで一気通貫で支援が受けられる点も評価されており、気候変動やCO₂排出量削減に向けた取り組みを評価するCDPへの回答支援などにも対応している。

また、リーズナブルな料金設定や全国約170の金融機関と提携していることから、中堅・中小企業への導入も拡大中だ。

「カーボンニュートラルの実現を見据えると、国内企業の99%以上を占める中小企業も含めて脱炭素化を支援することは非常に重要だと考えています。今後さらにサービスを進化させ、日本の産業界全体の脱炭素を後押ししていきます」(山崎氏)

あらゆる産業において求められるカーボンニュートラルへの対応には、担当者の専門性や経験値に左右されず誰でも取り組める仕組みと伴走者が重要だ。CO₂排出量の可視化からその先の支援を通じて、脱炭素の課題解決に貢献するe‒dashの取り組みに、今後も注目したい。

「e-dash」 導入事例

【事例1】東横イン
スモールスタートから全国約330店舗へ
脱炭素化にはまず、各店舗が自らの排出量を把握することが重要と考え、「e-dash」を導入。店舗スタッフに「仕事が増えた」と感じさせにくい「使いやすいUI」が決め手となり、全国約330店舗へ展開。自店舗の情報が可視化できることで、店舗での環境に対する意識も向上。
【事例2】日本政策投資銀行
職員の脱炭素意識を高める契機にも
一部拠点を対象に試験導入。使いやすさが評価され、国内全拠点への展開が決定。政府系金融機関として、企業の脱炭素化を支援するうえで職員の意識を高めたいとの狙いもあり、e-dashは説明会を開催するなど意識醸成の支援も実施。省エネ法定期報告機能も追加導入済。
 
【事例3】セントラル警備保障
Scope3算定の多角的なサポートを実施
セントラル警備保障(以下、CSP)を対象に導入後、CO₂排出量可視化における多角的なサポートの専門性の高さが評価され、グループ全体での導入を開始。さらにCSPに対してはカテゴリ1~15への対応を含むScope3算定のコンサルティングも実施し、順次ノウハウをグループ会社にも展開予定。
 
【事例4】イトーキ
他社システムからの転換で業務効率化を実現
メンテナンスの負担が大きい他社のCO₂排出量集計システムから「e-dash」へ切り替え。システムの利便性が高く評価され、国内全拠点への導入が決定。手入力の省略などによる業務効率化の実現にも貢献。