ユーザーに新たなメリット
新しいサービスで選択肢が広がる
SIMとは何か。そして、SIMロックとは
―2015年5月1日からSIMロック解除の義務化が始まりました。まず始めに、そもそもSIMとは何か、からお聞きします。
阿波村 スマホなどの携帯電話端末に挿して使用するICカードのことをSIMと呼んでおり、そこには利用者を特定するためのID等が入っています。ですから、SIMを端末に挿すことで、利用者が契約している通信事業者のネットワークにつながり、データを送受信したり音声通話をしたりすることが可能になるのです。
日本ではこれまで端末の販売と通信契約が一体となっているケースが多かったために、ユーザーがSIMを意識する機会はほとんどなかったのではないでしょうか。
―そのSIMをロックするとはどのような状態なのでしょうか。
阿波村 SIMロックとは、ある端末において特定の通信事業者のSIMしか利用できないように制限をかけている状態のことです。SIMロックされた端末でほかの通信事業者のSIMを挿しても、使用することはできませんでした。
―これまでは、SIMロックを解除することはできなかったのですか。
阿波村 いいえ、これまでも総務省は、利用者から要望があればSIMロックを外すことが望ましいという趣旨の指針を出しており、一部の端末であれば通信事業者はSIMロックの解除に応じておりました。しかし、通信事業者間や端末間で対応が異なっていたのです。実際、SIMロックを外し、たとえば海外にいるときは現地の安価なSIMを購入して利用するといったユーザーもいました。その間、電話番号は変わっても通信料を抑えることができますから。一方、国内でも格安SIMを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)が増えており、安価な通信料のメニューをそろえてもいます。
―MVNO、ですか。
MVNOがもたらす新しい選択肢
阿波村 大手の携帯事業者からネットワークを借りて、ユーザーに提供するのです。
これまで携帯電話のマーケットは大手の寡占状態で、それぞれ料金プランやサービス、携帯端末にも大きな違いを見出すことは難しいでしょう。既存の通信事業者も新たな料金プランを出していますが、まったく新しいプランやサービスを出すインセンティブは働きにくいのではないでしょうか。多くの人にとってスマホは必要不可欠な環境にあるのですから、選択肢は多いほうがいいはずです。政府としてもユーザーのニーズに応えるサービス競争を促したい。そのためには、MVNOが重要な働きを期待されているのですが、SIMロックの解除はそれを促す一つの要素となります。
―そこで、SIMロック解除の義務化につながるわけですね。携帯電話大手が発表した今回の義務化に対応する運用方針を見ると、基本的に5月1日以降にリリースされた端末が対象となり、対象となる機種を購入してから6カ月を経過した後に解除に対応するということです。
阿波村 今回は「SIMロック解除に関するガイドライン」が改正され、原則として自社で販売したすべての端末についてSIMロック解除に応じることとされておりますが、端末の入手のみを目的とした行為の防止等のために最低限必要な期間は解除に応じないことなどの措置を講じることは妨げない、とされています。SIMロック解除により、ユーザーの通信事業者の選択肢は増えますので、MVNOの活性化につながると見ています。
―競争が起こることで、さまざまなサービスが生まれてくるのだと。
阿波村 スマホなどのユーザーにとって選ぶことのできるサービスの幅が広がることがSIMロック解除を義務化する指針の狙いではないでしょうか。特にMVNOという点では、その道には2段階のステップがあると考えています。