大川原化工機「冤罪事件」、国と都がまさかの控訴 捜査・立件を主導した「渦中の人物たち」の今

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2020年3月。細菌兵器の製造など軍事転用が可能な装置を、経済産業省の許可を得ずに中国へ不正に輸出したとして、横浜市にある大川原化工機の大川原社長ら幹部3人が逮捕・起訴された。

容疑は外為法違反(無許可輸出)だった。同年6月には、韓国にも経産省の許可を得ずに輸出したとして再起訴されている。

起訴後も勾留が約11カ月間続き、翌年の2021年8月に初公判が予定されていた。が、初公判の4日前に東京地検が起訴を突如取り消した。取り消した当日は、公安部と経産省とのやり取りを記した大量の捜査メモを、東京都や国が東京地裁に提出する期限日だった。

大川原化工機の装置は、経産省の輸出許可が必要な機器ではそもそもなかった。つまり公安部による事件の捏造に、東京地検は結果として加担し、ずさんな捜査を追認していたのである。

渦中にある公安部、経産省、地検の人物たち

大川原化工機事件の捜査を指揮したのは警視庁公安部外事1課の宮園勇人警部(肩書は当時。以下同じ)だった。「海外の“あるべきではないところ”で大川原化工機の噴霧乾燥器が見つかった」と事件の構図を描いた。公安部は30人規模の捜査チームを結成した。

捜査チームの一員で宮園警部の忠実な部下の1人・安積伸介警部補は立件に向けて「捜査メモ」や「聴取結果報告書」を大量に作成した。

安積警部補は、大川原化工機の島田順司取締役に、殺菌の解釈を誤解させたうえで供述調書に署名捺印するように仕向けた。島田氏の逮捕直後の「弁解録取書」を作成する際、島田氏の指摘に沿った修正をしたように装い、実際には島田氏が発言していない内容の同書を作成し署名捺印させていた。

経産省の窓口となった安全保障貿易管理課のT検査官は「大川原化工機の噴霧乾燥器は生物兵器の作成装置に転用できない」「したがって輸出規制製品に非該当」とかたくなだった。

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