「防災」と「環境」を両立させる
“日本発”の高技術開発に挑む
新素材「環境活性コンクリート」誕生

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日建工学も設立以来50年以上にわたり、業界の高技術化をリードしてきた。ただし、国内においては、市場が成熟することで、工法や製品が標準化・汎用品化してしまうのも事実だ。このため、日建工学では、付加価値が高く差別化につながる製品開発を積極的に進めてきた。コンクリートであっても環境に配慮している製品や、景観が周囲の風景になじむ製品の開発でも、業界に先駆けた存在だ。

ラクナ・IV

ヒット製品に「ラクナ・IV」と名付けられた消波根固ブロックがある。4本の脚体の集合部に4個のくぼみ状の穴を有するブロックだ。放射状のブロック形状でありながら、くぼみと脚先がかみ合うため、耐波安定性が向上するという特長がある。さらに、大きなくぼみが空隙率を高める。4本の脚体を持つ一般的な消波根固ブロックの空隙率は約50%だが、「ラクナ・IV」のそれは56.5%にも達するという。それだけブロックの所要個数を減らすことができるため、ブロックの製造コストだけでなく、施工のコストや工期も大幅に削減できると好評だ。

コンクリートにアミノ酸を混ぜた
「環境活性コンクリート」を開発

日建工学は、前例のない取り組みにも積極的に取り組んでいる。市場にインパクトを与えるとして、大きく注目されているのが、コンクリートにアミノ酸を混和した新素材「環境活性コンクリート」だ。日建工学、味の素、徳島大学の共同研究により開発されたもので、日建工学と味の素の2社で特許を保有している。「環境活性コンクリート」は、コンクリートにアミノ酸(アルギニン)を混ぜることにより、それがゆっくりと溶け出し、微細な藻の成長を促進する画期的な製品だ。これまで、全国の海や河川、約60カ所で実証実験を行った結果、コンクリートブロック表面の付着藻類の量が、通常のコンクリートの5倍~10倍に増加することが実証されているというから驚く。すでに魚礁や消波根固ブロックとして採用されている地域もあるという。コスト面での折り合いが付けば、今後、各地で採用される可能性がある。

海中に設置された環境活性コンクリート。藻が多く付着することで魚礁や消波根固ブロックとしての利用が期待される

アジアの社会資本整備プロジェクトに
大きなビジネスチャンス

新商品開発に加え、日建工学の将来的な成長の鍵を握るのが海外戦略だ。同社は2015年1月、ベトナム・タインホア省で建設中のニソン製油所建設プロジェクトにおいて、防波堤建設に使用される約2万4000個の「ラクナ・IV」を受注した。同社はもとより、日本の消波根固ブロック業界でも初の海外大型案件受注である。ニソン製油所は、出光興産、三井化学、PETRO VIETNAM、クウェート石油公社の共同出資による「ニソン精製有限責任会社(NSRP)」が運営するベトナム国内2つ目の製油所だ。完成すれば、ベトナムにおける石油消費量の約60%(20万バレル/日)を供給する製油所となるだけに大いに期待されている。

消波根固ブロック業界初の海外大型案件受注となったニソン製油所のラクナ・IV

日建工学では2012年に同国ハノイ市に駐在員事務所を設立している。この拠点を中心に、ベトナムをはじめとするアジア諸国の社会資本整備に携わっていく考えだ。

日建工学は、現状に甘んじず次代を見越した技術開発や市場開拓に積極的に取り組んでいる。持続的な成長を果たす企業として、中長期的に注目に値する一社と言える。

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