日本女子大学の改革「グローバル×専門性」を強化 歴史が培った女子総合大学の強みと展望とは

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日本女子大学「百二十年館」の外観
写真の百二十年館をはじめ、120周年を機にキャンパスも再整備した
日本女子大学は改革の真っただ中にある。創立120周年を機に生まれ変わり、学部と学科の再編を推進、キャンパスのグランドデザインも新たにした。2024年には建築デザイン学部および建築デザイン研究科修士課程の開設を予定している。日本女子大学の教育に連綿と息づくDNA、そして一連の教育改革で強化しているポイントについて、篠原聡子学長に聞いた。

ジェンダーの枠を超えた自由な発想力を

――現在の日本の高等教育は多様化していますが、改めて女子大学で学ぶ価値についてお聞かせください。

日本女子大学 学長 篠原聡子氏
学長
篠原聡子氏

篠原 ジェンダーの固定観念や性別の役割分担がない環境下で、自由な発想力を育める点にあると考えています。現代の社会には、仕事やプライベートを問わず、無意識のうちに男女の役割が固定化しているケースが根強く残っています。それは大学でも同様で、ジェンダーの制約で挑戦の機会が減っている可能性は否めません。

その点、女子大学は女性だけの集団の中で、伝統的なジェンダーの役割や制約を取り払い、発想力を伸び伸びと育み、物おじしないマインドを身に付けることができます。こうした環境で学ぶことで、社会に出てからも困難に対して果敢に挑戦し、リーダーシップを取れる卒業生が多い印象です。

――では、日本女子大学ならではの学びの特徴について教えてください。

篠原 創立者成瀬仁蔵が没する直前に遺した教育理念の一つである「自らの人格を高め、使命を見いだして前進する」という理念の下、女性が社会で力を発揮できる思考力と実践力を育んできました。知識や技能教育に偏ることなく、感性や特性なども重視しながら、人間性を発達させる教育を提供することが本学の使命でもあります。さまざまな課題の解決に役立つ高い専門的能力、それを生かすことのできる応用力と表現力、時代の変化や多様な価値観に対応できるフレキシブルな感性の育成を重視しています。多様な分野を学べる女子総合大学として、文理融合かつ少人数教育でゼミ形式の授業を充実させています。また、在学中に1学年相当まで留学できる制度や、春季や夏季の長期休暇中に参加できる大学公認の海外短期研修も実施し、グローバルな視野と柔軟な思考、高い専門性を持つ人材の育成にも注力しています。

日本女子大学「百二十年館」の内観

学部学科の再編で学びの深化へ

――創立120周年を迎えた2021年4月、目白キャンパスに4学部(家政学部、文学部、人間社会学部、理学部)15学科と大学院を統合し、女子総合大学として学部や学科の枠を超えて学びを深められる環境を整備されました。さらに、22年に理学部2学科の名称変更、23年に国際文化学部開設と、再編と新設が連続しています。それぞれの目的についてお聞かせください。

篠原 理学部の学科名称については、数物科学科を数物情報科学科へ、物質生物科学科を化学生命科学科へと変更しました。これまでも理系人材の育成に尽力してきましたが、学科の教育・研究内容をより明確にすることを目的としています。

23年4月には、多文化共生視点を持つ国際人材を育成するため、国際文化学部を開設しました。「脱教室・脱キャンパス型の新しい学び」をコンセプトに、海外留学を含む実践的なプログラムで世界の多様な文化や言語を学べるところが特徴です。例えば、1年次には海外短期研修を全員必修とし、欧米やアジア各国などで、実践的な学びを2週間程度体験してもらいます。体験を通してグローバルな感覚を養うだけではなく、デジタルデバイスなどを通して英語運用力とICTを修学します。

――24年には、建築デザイン学部を開設されます。

篠原 家政学部住居学科は、現在までに多くの著名な建築家を輩出してきました。建築デザイン学部は、この家政学部住居学科を母体とする新学部です。これまで培ってきた「生活者視点の建築」を追求する学びを大切にしながらも、世界で活躍できる人材を輩出するため、グローバルな教育を展開したいと考えています。

日本では工学系や芸術系の学部に建築学科を内包しているケースが多いですが、海外では建築学部が独立しているケースが主流です。建物の設計に関する学びだけではなく、少子高齢化など日本ならではの住まいの課題を解決できる人材を育成するためのカリキュラムも充実させます。

例えば、海外の大学と連携したプログラム「建築総合演習」は、現地に赴いてディスカッションや実践的なワークショップを実施します。現在、日本の企業では海外プロジェクトが増えているので、そうした機会に挙手できるように経験の選択肢を増やしてほしいと考えて、このようなプログラムを設計しました。

大学全体で取り組む多彩なキャリア支援

――学生のキャリアサポートにも積極的に取り組んでいます。

篠原 女性の就業力を支え、学生一人ひとりが望む就職を叶えられるよう、キャリア支援に大学全体で取り組んでいます。具体的には、1年次からキャリアに関する多彩な講座を用意し、社会で自立した女性を目指すために段階的に支援します。カウンセリングセンターが行う性格分析セミナーや職業興味検査(キャリア自己診断テスト)等の各種講座もあります。本学現代女性キャリア研究所とも連携し、女性の生きる道を研究するとともに、同窓会組織が教養講座や就職相談会を実施するなど在校生を手厚くサポートしています。

また、働く女性を支援するためのリカレント教育も拡充し、働きながら学べる多彩なプログラムを用意しています。23年10月には、次世代リーダーを目指す女性のために、DX人材育成コースを開講しました。各業界で不足しているデジタル人材に必要なITスキルやDX推進に必要なマネジメント能力などを身に付けられる内容となっています。

――最後に、今後の構想と読者へのメッセージをお願いいたします。

篠原 学部の新設が連続しておりますが、現在は食科学部(仮称・25年開設予定)を構想しています。現在、家政学部食物学科の中に食物学専攻と管理栄養士専攻がありますが、それを1学部2学科に再編する予定です。食科学部では、食と健康に関する基礎知識を土台に、食品・栄養・調理の3分野を科学的観点から総合的に学ぶことで、より専門性が高いエキスパートを養成していきます。長年の歴史で培ってきた環境と学びを土台に、時代の変遷を捉えながら刷新し続けている本学ならではの学びに、ぜひ注目していただきたいです。

日本女子大学について詳しくは、こちら