管理会社を変更したマンション理事達の奮闘記 意外と知らない「マンション管理」見直しのコツ
マンション理事A氏:副理事長 兼 専門委員会メンバー。新築当初から入居しており、マンション理事は延べ5回目
マンション理事T氏:地域のコミュニティー活動に精通したベテラン理事
マンション監事・専門委員F氏:監事 兼 専門委員会メンバー
*専門委員会:大規模修繕工事など長期案件を検討するチーム
長期修繕計画の不安と管理の質低下が契機に
——皆様がお住まいのマンション(フローレンス井口台)について特徴をお聞かせください。
マンション理事A氏(以下、A氏):私たちの住む「フローレンス井口台(広島県西区)」は100戸を越えているので、大規模マンションに分類されるんじゃないでしょうか。
マンション理事T氏(以下、T氏):閑静な住宅街ですし、瀬戸内海の雄大な景色を満喫できる高台にあるところが気に入っています。私も新築当初の23年前から住んでるんですが、長く住み続けてる方が多いですね。
——築20年を超えるマンションだと、維持・管理が大変ではないですか?
T氏:そうですね、エレベーターのリニューアルや、機械式駐車場の修理も多くなっている時期ですし、2回目の大規模修繕工事も控えているので、課題は山積みです。
マンション監事・専門委員F氏(以下、F氏):2022年に、変更前の管理会社から長期修繕計画書をもらい、具体的に検討を進めているところでした。でも、管理会社との間で意見の隔たりがあり、幾度か計画の見直しを申し入れましたが、折り合いがつかなくて……。
A氏:それだけでなく、変更前の管理会社には新築以来お世話になってきましたが、担当者がどんどん変わってしまい希薄な関係になりつつあったんです。日々の管理業務や定期的に必要な工事の業務報告の対応についても支障が生じてしまうため、理事会としてはほかの管理会社を探すことも考えるようになりました。
客観的な指標で比較し誰もが納得する「管理会社」選び
——とはいえ、管理会社の変更となると、相当ハードルが高いような気がしますが。
T氏:そうなんです。新たな管理会社の選定もそうですが、住民の過半数の賛成を得なければならない変更手続き(※1)が大変でした。
A氏:まず、実際に管理会社を変更する際には2つのハードルを越えなければなりません。1つ目のハードルは、「管理会社を変更するための総会議案」を理事会で稟議し総会へ上程するプロセスで、2つ目のハードルは「管理会社を変更する総会決議で区分所有者の過半数の同意を得る」ことです。
F氏:住民の中には、変化を望まない人もいますし、新築当初から20年以上も同じ会社に委託していたこともあって、管理会社のスタッフや管理員と親しい人も少なくなかったので、過半数の住民の理解を得るのは難しく感じました。
A氏:これについては、私のほうで「管理委託業務に関する現状の問題点」や「管理会社を変えるメリットとデメリット」を整理することから始め、「管理会社の見直しで何を改善するのか」をゴールに設定してアクションプランを組み立てました。その次に、「私たちのニーズに合った管理会社と契約しよう」という意識を醸成していくための仲間(当時の理事会メンバー)を募っていきました。
T氏:私は当初より管理会社の見直しに賛同していた一人ですが、過去の経験から実際に管理会社を変更するにはさらに多くの仲間が必要だと感じていました。「管理会社を見直そう」という動きが本格的になってきたのは、以前から管理会社の姿勢に疑問を持っていた理事経験者の方々の賛同が得られた時でしょうか。また、日頃からマンション内のコミュニティー活動に熱心な住民の協力も大きな原動力になりました。
F氏:管理会社の見直しについては、月々開催する定例の理事会では議論ができないため、理事だけが集まる臨時理事会を開いて協議を重ねていきました。
A氏:いざ、臨時理事会で協議を始めてみると、管理会社の見直しについて前向きな理事が意外と多いことに驚きました。実のところ私は2つ目のハードルより1つ目のハードルのほうが飛び越えるのが難しいと予想していたので、これは大きな第一歩になると感じました。
T氏:理事会の協議がまとまって勢いがついたこともあり、2つ目のハードルを飛び越えるまでアッという間に話が進みましたね。今思えば、徐々に仲間を増やしながら雪だるま式に賛同者を集めたことが成功のカギだったように感じます。あと、難しそうに思えるミッションでも、最初の段階で課題とゴールを明確にしてから事に当たった点も功を奏したと思います。
――具体的にはどのように新しい管理会社を選んだんでしょうか。
A氏:管理会社の選定に当たっては「長期修繕計画書の透明性」を必須条件として数社にコンタクトを取り、まずは管理仕様の打ち合わせで当方が抱える課題や要望を伝えて見積もりを入手しました。ここで気をつけたのは、管理会社と1対1で交渉しないということです。これは後々住民の方から、あらぬ疑いをかけられないように交渉過程の透明性を担保するという意図がありました。
F氏:管理仕様の打ち合わせでは、「オンライン会議が開催できること」も重要なポイントになりましたね。ここ数年の理事会は感染症対策を理由に書面回覧のみで理事会を開催しないケースが増えていました。これは理事会が形骸化する大きな要因と感じていましたし、社会情勢に対応できない管理会社をふるいにかける意味合いもありました。
T氏:その後、マンション全体の利益に結び付くよう、理事会主導で複数の管理会社と綿密な打ち合わせを行いながら丁寧に管理会社選びを進めていき、4社に候補を絞り込みました。このような取り組みを経て、各社のプレゼンテーションを全居住者が参加できる形で開催して多くの賛同者を得ることができました。
A氏:管理会社選びの最終段階は、4社から1社に絞り込む難しい判断が理事会に残されていました。ここで理事会は、各管理会社から受けた説明や資料を基に、サービス内容を点数化して、最も点数の高かった管理会社を最終選考とすることにしました。点数化するに当たっては、「公平性」を担保するため、事前に約50項目の評価ポイントを設定し各理事が採点した結果を持ち寄って総合評価を決定しました。
最終的に選ばれた管理会社は?
――最終的には、どの管理会社が選ばれたんでしょうか。
A氏:あなぶきハウジングサービスです。管理業務の充実度が決め手でした。24時間運営のコールセンターがあり、いざというときに頼りになることはもちろん、管理担当者の研修制度もしっかりしているので、日々の管理をお願いできると思いました。あなぶきハウジングサービスさんとのコミュニケーションも円滑にできています。
T氏:ハピサポ(※2)への期待も大きいです。ほかのマンション管理サービスは基本的に共用部分のみを対象としたものばかりだったのですが、ハピサポは専有部分も対象となっているところが特徴的で、ほかにない魅力だと感じました。
F氏:ハピサポを使えば、マンションの評価額がわかるのもうれしいですね。自分が住んでいるマンションの客観的な金額を知る機会はなかなかありませんから。
A氏:今後はこの評価額を基に資産価値を上げるためにどうすればいいのか、理事会でも取り組んでいきたいと思います。
管理会社は変更可能、まずは現状認識を
A氏:初めに住民の皆さんに管理会社を変えようという起案をしたときは驚かれました。しかし理事会を筆頭に住民みんなで協力すれば、管理会社は変えられるんです。「管理会社に不満はないか」「あるとすれば何に対してなのか」といった具合に、細かく現状を把握していき、期待値の高い管理会社を複数探すところがスタートだと思います。
F氏:課題があっても現状維持を望む人、現在の管理会社に忖度する人もいますから、そうした人たちに納得してもらうための仲間集めも重要ですね。当理事会では、居住者の目に留まる掲示物で総会の出席者を増やすところから始めました。
T氏:昔に比べて、住民同士のつながりが希薄になっていますが、同じマンションに住む人は資産としてのマンションを守る仲間にもなりうる。マンション管理を「自分ごと」として捉えてもらえることが重要ではないでしょうか。
⇒マンション管理を見直す
イラスト/兎山うに