値上げ・事業撤退の通告を受けてからでは遅い マンション管理、乗り換えを考えるタイミング

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マンション管理に欠かせない清掃など
主要駅からの距離などの立地条件、築年数、物件価格、間取り……。こうしたマンション選びのチェックポイントに、今後は「管理状況」という項目が加わることになりそうだ。今年の法改正を機に、管理状況が資産価値にも影響を与える可能性が出てきたからだ。一方で、管理会社の事業撤退や値上げなどの問題が顕在化しつつある。日々の暮らしとマンションの価値を守るためには何をするべきか。

マンション「適正な管理」が市場にもたらす影響

2022年4月、改正マンション管理適正化法が施行された。狙いは、マンションの適正管理を推進させること。中でも、管理計画認定制度(※)の開始に注目だ。

これまでマンションの評価は立地や主要駅からのアクセスなどを基に行われてきたが、今後は「管理状況」もマンションの資産価値や居住価値の向上に影響を与える可能性が大きい。なぜなら、管理計画認定制度により「適正な管理が行われているマンションかどうか」が公表され、市場に情報が流れることとなったからだ。

マンション管理を行っているあなぶきハウジングサービス 開発事業本部 東日本事業部 部長の大森慎太郎氏は、法改正がもたらす影響についてこう語る。

「今回の法改正や認定制度は『きちんとした管理計画を持つマンションかどうか』を示し、区分所有者やマンション購入を検討する人に認識しやすくすることが1つのポイントです。管理の質が、マンションの資産価値に直結するので、今後の潮流は目に見える形で変化していくでしょう」

あなぶきハウジングサービス開発事業本部の大森部長
あなぶきハウジングサービス 開発事業本部 東日本事業部 部長 
大森慎太郎

こうした中では、委託先となる管理会社が焦点となる。実は、管理計画認定を取得した既存マンションや予備認定を取得した新築マンションには、共有部分のリフォーム融資の金利引き下げや、フラット35の金利引き下げといったメリットもある。こうしたメリットも享受できるよう、マンションごとに異なる管理や付加価値の提供、区分所有者の価値観に応じた要望に柔軟な提案を行っていくことが、管理会社に求められる。

「当社は、そのマンション自体を『地域の情報を集めて掲示できる場所』へと変えることで、地域への貢献やマンションの資産価値向上をご提案させていただくこともあるんです。実際、近隣のお店の広告や地域の情報を提供するデジタルサイネージをマンションの共有部分に導入する提案も行っています」(大森氏)

提示されうサイネージのサンプル画像
掲示されるデジタルサイネージのサンプル画面

※管理計画認定制度:マンションの管理組合が管理計画を提出して地方公共団体に認定を受ける制度

マンション管理業界に起こった異変

しかし「マンションの資産価値向上」以前の問題がある。1〜2年前から管理委託料の大幅な値上げに踏み切ったり事業撤退したりする管理会社が増えていると大森氏は言う。時代の流れとともに人件費が高騰。それだけでなく管理業界は寡占化し、管理戸数の少ない企業の事業撤退や事業譲渡が進んできた。

さらに値上げをきっかけに、潜在的だった管理会社への不信感も顕在化するという。例えば「故障などの問い合わせや修理の対応が遅い」「修繕工事の見積金額が相場より大幅に高い」などの不満が生まれ、結果的に住民は管理会社の乗り換えを検討するというわけだ。

こうした中、乗り換え先として注目されているのが、全国の分譲・賃貸マンション3846棟・18万1025戸(2021年8月末時点)の管理実績を持つあなぶきハウジングサービスだ。

「そもそもマンション管理は人に依存するサービスです。居住空間や資産としてのマンションを維持していくためには、質のいいサービスを持続的に提供することこそが重要です。例えば私たちは24時間365日、コールセンターを開き、問い合わせに対応できるよう整備しています。高松市と札幌市の2カ所に自社のコールセンターを設け、災害時にもマンション管理におけるさまざまな機能がマヒしてしまわないよう徹底しています」(大森氏)

あなぶきハウジングサービスにおいて、実際に研修施設で研修を行う様子
実際に、研修施設で研修を行う様子

さらに、日々の上質な管理業務を継続できるよう人材育成にも力を入れている。本社のある香川県高松市と神奈川県川崎市に、マンションをそのまま再現した大型研修施設を保有。社員も管理スタッフも、実際にマンション管理を体験しながら学んでいる。

「充実した教育制度は離職率の低下につながり、ノウハウの蓄積や共有にも役立つはずです。私たちはいわゆるデベロッパー系の企業で、グループ企業が分譲したマンションは約30%。残りの70%は乗り換えやM&Aでグループとなった会社の物件で、あらゆるタイプのマンションの管理実績があります。

規模や築年数、価格帯を問わず、多くのマンションの管理ノウハウを蓄積し、日々共有することで、質のいいマンション管理に生かすことができるんです」

購入から10年が「管理会社」見直しのタイミング

同社では今年の7月から、さらに幅広いマンションタイプに対応するべく、30戸以下の小規模マンションに特化した「SMUSIA(スムシア)」も開始している。同社の東日本支社 小規模マンション管理支援事業部 マネージャーの松下力也氏はこう話す。

「30戸以下の小規模マンションは、施設維持にかかる1戸当たりの費用負担が大規模マンションより高くなりがちです。しかし、人件費の高騰もあり、小規模マンションの管理は売り上げにつながらないとして、値上げや事業撤退をする企業が増えています。そこで、小規模マンションに特化した、コストパフォーマンスを重視する管理サービス『SMUSIA』を始めたんです」

あなぶきハウジングサービスの小規模マンション管理支援事業部、松下マネージャー
あなぶきハウジングサービス 東日本支社 小規模マンション管理支援事業部 マネージャー
松下力也

SMUSIAはアプリでマンション管理情報を共有し、1人の管理スタッフが近隣の小規模マンションをまとめて担当するビジネスモデル。管理スタッフをシェアする形で効率化を図るため、現在はマンションが多い関東の1都3県でサービスを提供している。これまでマンション管理はオーダーメイドスタイルだったが、SMUSIAは『IT・シェアリング・パッケージ化』によって、効率化と管理費の20%削減を目指している。

「アプリと聞くと身構える方もいるかもしれませんが、予想以上に高齢の方にも利用いただいています。一方で管理人がマンションにいる時間が減る不安についても、コールセンターが24時間対応しているので、総合管理と比べて品質を下げるものではありません」(松下氏)

SMUSIAで提供している、アプリケーションの画面
SMUSIAで提供している、実際のアプリ画面

マンションの規模にかかわらず、管理会社の事業撤退や値上げ、自主管理を主導してきた管理役員の高齢化や退去などを機に、管理体制が突然行き詰まることはある。危機に直面して初めて、急いで管理会社を探すのは難しいもの。

「マンション管理の満足度は目に見えにくく、値上げなどの事象をきっかけに、初めて潜在的な不満、不信感に気づくものです。とくにマンションを買ったばかりのときは胸が躍り、日々のちょっとした管理の違和感(不満足)には気づきにくいものです。ところが、10年経つと『清掃が行き届いていないところ』などの不満が可視化できることもあります。購入から10年経ったタイミングで一度、管理状態の見直しやちょっとした違和感を可視化することでマンションごとに適した管理会社に出合うこともできると思います」

保険と同じように、普段から情報を収集し、料金やサービスの内容について比較検討してみる。それこそが、大切な資産の価値を維持し、日々の暮らしを守ることにつながるはずだ。

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