ITによる新しい時代の新しい価値創り
【事例講演Ⅰ】
M2Mと『ビッグデータ』がビジネスに結びつくまで
日立建機の松田富士夫氏は、予防的保守の提案型サービス効率化のため、同社が開発、サービスとしても提供している「Global e-Service」について語った。提案型は、受注に結びつかないとそれまでの無償点検・提案作業がムダになるため、受注確率の高い機械の予測が重要。同社は、基幹システム情報に加え、建機のセンサーから集めたM2Mデータを分析し、受注と関連性の高いパラメーターを発見した。松田氏は「すぐには思い浮かばないような項目の影響が大きいことが、ビッグデータ分析でわかった。今後も精度の維持・向上を図りたい」と述べた。
【IoTとテクノロジー】
IoT事業化を支えるHPのプラットフォーム
千葉・柏の葉スマートシティでの健康データを見える化するサービスの運営基盤提供など、IoTソリューション分野で豊富な実績を持つHPの山本幸治氏は「IoTのデータから知恵、経験を抽出、エンドユーザー向けに新たな体験・サービスを提供して収益化することがゴール」と語る。その推進には、多種多様なデバイス、ネットワーク、センサーに接続し、多様かつ大量のデータを収集分析できるIoTプラットフォームが重要。HPでは、その基盤上に、スマートシティ向けの多様なアプリケーションを実装したエネルギー管理パックも発表している。山本氏は「より多くのビジネスプレーヤーが、IoTデータを使ったサービスを構築しやすくなるように支援させていただきたい」と述べた。
【事例講演Ⅱ】
住宅×IoT≠便利な暮らし
三井不動産レジデンシャルの町田俊介氏は、住宅とIoTを組み合わせてユーザー価値の創出を目指す取り組み事例を紹介した。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)と店の優待などのソフトサービスを連携させることによる電力ピークカット促進の仕組み。モデルルームを舞台に未来の家を創るハッカソンの開催や、「2020ふつうの家展」ではビデオ通信で住空間同士を結ぶツナガル窓など、ユニークな仕掛けで未来の暮らしを提案する。町田氏は「便利さ以外にも、人のインサイトに働く価値も大切だと考えている」と述べた。
【特別講演】
人間中心で考える、先進車両システムの将来
IoTは、自動運転など自動車の領域でも活用が加速している。マツダ 統合制御システム開発本部長の原田靖裕氏は、同社の車の未来像について「安全と走る歓びの両立」という考えを示した。安全が脅かされる状態は、正しく運転していないか、正しく運転しても避けられない、避けることが難しい状態、と考えられる。そこで、現代の車は正しい運転を促すだけでなく、カメラや位置情報を駆使して建物の影になる部分の状況まで把握することによって、危険回避をサポートする仕組みを進化させている。その方向性には、自動運転で人を楽にする機械中心の考え方と、人間は自分の能力を使うことを求めるというヒト中心の考え方――の二つがあると指摘した原田氏は、「マツダが目指すのは後者。機械による支援で安全を担保しつつ、運転はあくまで人がすべきと考えている」と訴える。マツダは従来からナビゲーションなどHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を独自開発してきたが、今後はさらに、運転者の処理能力に応じて適切な情報を与えるHMIが重要性を増す。原田氏は「人が安全運転に注力できるシンプルさをハード&ソフトで造り込み、車が運転者の心身状態を把握して人に適合制御する、双方向性を備えたコクピットを目指したい」と語った。